映画『真夜中の五分前』。
上海で時計職人をしている日本人男性が、一卵性双生児の双子の女性と出会い、不思議な世界に引き込まれていくお話です。
主演の日本人男性、リョウを演じるのは三浦春馬。
本編はほぼ中国語、三浦春馬はこの映画のために中国語を勉強したそうですが、きれいな発音でうっとりします。
また、繊細な時計職人という仕事もとても似合っています。
『世界の中心で愛を叫ぶ』の行定勲監督が手掛けているだけあって、映像はとても美しくそして幻想的。
ただし少し難解でもあって、結論については意見が別れる作品でもあります。
ストーリーについて、好きなところ、それぞれの悲しさ、三浦春馬について書いていこうと思います。
真夜中の五分前
作品情報
製作年度 |
2014年 |
上映時間 |
129分 |
監督 |
|
キャスト |
リョウ
|
予告
好きなところ・美しい世界観
上海。古い時計店で時計修理をするリョウ(三浦春馬)は、夜の室内プールで中国人女性のルオラン(リウ・シーシー)と出会う。
ルオランはリョウに声をかけ、妹の結婚祝いのプレゼントを一緒に選んでくれないかと頼みます。
店を見て歩く二人。
なかなか決められないリョウは、自分が働く店にルオランを連れてゆき、置き時計をすすめ、ルオランはその時計を選びます。
リョウとルオランが出会い、言葉を交わし、一緒に街を歩く場面が美しく幻想的。
交わす言葉は少なく、リョウはプールで出会って初めて言葉を交わしただけの女性から、まったく知らない人に贈るプレゼントを探すことに戸惑っているのがわかる。
でもリョウもルオランを気にしていたのは明らかで、期待に応えようと自分の店を案内する心理もいいなと思いました。
その後、ルオランの妹は一卵性双生児で、モデルのルーメイ(リウ・シーシー)ということが明かされます。
ルオランは物静かな女性ですが、ルーメイは自由奔放な性格です。
ルーメイの婚約者は映画プロデューサーのティエル(チャン・シャオチュアン)で、女優になりたいルーメイにとって、公私共のパートナーであり、揺るぎない関係のように見える。
また、ルオランとルーメイは仲のよい双子の姉妹なのようでいて、ルオランはルーメイといるとき暗い表情を覗かせることもある。
ルオランはルーメイから自分の居場所を奪われてきたこと、いなくなってほしいとまで考えてしまうこと、そんな苦しい胸の内をリョウに打ち明けます。
そして、ルオランの気持ちをリョウは受け止める。
時計店の上に住んでいるリョウは、ルオランと時計の音を聞き、リョウのかつての恋人の話をします。
時計を5分遅らせるのは、亡くなった恋人の習慣だから。
時計の音を聞きながら、時間をすごす二人。
そのあたりのエピソードも好きです。
リョウとルオランの距離は近づき、恋人同士といえる関係になります。
残念なところ・「生き残ったのは誰か」だけの話に
映像はとても美しくミステリアスで素敵だったのですが、映画なのは百も承知の上で言わせていただくと、それでもちょっと無理がありすぎな展開に思えます。
また、映画の中盤で、ルオランとルーメイが二人でモーリシャスに旅行に出かけ、クルーザーの事故でルオランは亡くなるのですが、1年後の話はほぼ「本当にルーメイ? ルオランじゃないの?」に尽きることも少しがっかり。
伏線がやたらと入り、あまりにも「ルーメイ?」「ルオラン?」が続くので、ちょっと食傷気味になってしまいました。
それにルーメイの婚約者ティエルの疑念があまりにしつこく、愛情の薄っぺらさが強調されて不愉快でした。
悲しいところ・誰もが誰も愛していない
リョウが仕事をする時計店の年配の主人が、愛読する詩集がヒントです。
『誰も他人を愛することはない。
他人の内にいる 、いると思っている自分だけを愛する。
愛されないことを悩まなくていい 。
人はお前を他人として感じたまでだ』(フェルナンド・ペソア)
この詩の指すところが、ストーリーのすべて。
とても悲しい話です。
誰もが誰も愛していない。
それどころか、自分のことすら愛せないこともあって、余計に悲しい。
それは4人の行動からも見て取ることができます。
ルオラン
・妹と間違えられて否定しない
心のうちを打ち明けて親しくなったリョウと親しくなるルオランでしたが、ルオランは自分が何者か?という悩みと、ルーメイのように生きたいのに生きられない自分への不満が膨らみ、リョウを遠ざけ、自分自身も遠ざけようとします。
リョウと一緒にいながら、リョウがその場を少し離れた隙に、通行人たちにルーメイと間違えられ、たまたま居合わせたティエルからもルーメイと間違えられても、自分はルオランとは主張しないで、ルーメイを装います。
しかも、ティエルに買ってもらった服をリョウの前で着ているのです。
プールでリョウと会ったときはリョウに惹かれたものの、結果的にそれは一時的な気持ちでしかなかった。そんなふうに捉えました。
・リョウが贈った腕時計を教会に
ルオランとルーメイはモーリシャスに旅行に出かけ、乗っていたクルーズ船の事故により、ルオランは亡くなりますが、その前にルオランとルーメイは教会を訪れます。
そしてリョウがルオランのためにと贈った腕時計を、ロザリオの代わりに置いていってしまう。
その後にリョウに宛てた手紙で「私は5分前ではなく、今を生きたいと思う」と綴っているように、事故とは関係なく、そもそもルオランはリョウとの別れを決めていたように思えます。
ティエル
・ルーメイとルオランを間違える
ルーメイの婚約者のティエルは、ルーメイの奔放さを愛していました。
けれど事故が起きて助かったルーメイを、ティエルはルオランではないのかと疑いだします。
ルーメイとティエルは結婚したのに、それでもティエルは疑っている。
ルオランを亡くしたショックと、ティエルから疑われるほどに、ルーメイの精神状態は不安定になり、怪しい態度を取ってしまう悪循環に。
最終的には、ティエルは自分の妻はルオランだと確信し、一方的に終わりを告げます。
ルーメイはルーメイのはずなのに、ルオランのことを私と言ったり、ブランコで怪我した傷のことなど、疑わしい部分は確かにあります。
ですが、ティエルにしても、ルオランをルーメイと間違えたことがある。
つまり本当は二人を見分けることなどできなかった。
どちらかにこだわりながら、実はルーメイのことも愛せなくなっていた、それだけのこと。
リョウがティエルを訪ねて、ルオランについて話したとき「もう、どっちでもいい」と言いますが、それが偽りのない本音なのでしょう。
疑い始めたら愛は終わりです。
ルーメイ
・ルオランがいなくなり自分があやふやになった
二人で一緒にいるときは、強気で積極的だったルーメイが、ルオランがいなくなってから、自信のないような振る舞いをすることが増えます。
逆に別人のように演技にのめり込むようにも。
ルーメイは、ルオランがいたから自由に振る舞えたけれど、一人になったら別人のようになってしまった。
結局二人とも共依存の関係にあって、バランスを取り合っていただけ。
自分を見つめず、自分を愛さずに生きたツケを払うことになったのです。
リョウ
・昔の恋人の時間の中で生きている
ルオランに気持ちを打ち明けたリョウですが、昔、死別した恋人の習慣だった、部屋の時計を5分遅らせる習慣をやめることができません。
(そもそも戻す気がない?)
ルオランはモーリシャスからリョウに手紙を送ります。
その内容は、自分の時間を生きようと思う、とリョウとの別れとも取れるものでした。
モーリシャスの教会に置いた時計を、ルーメイが真夜中に届けに訪れたときも、リョウの部屋の時計は5分遅れ。
腕時計の時間はきっかり12時でした。
リョウにとってルオランは、好きな女性ではあったけれど、たぶん唯一無二の相手ではない。
リョウは、事故で亡くなったのはルオランで、生き残ったのはルーメイだと信じていましたが、それも次第にわからなくなります。
リョウのなかに、どちらでも愛せるような気持ちがあるのかもしれない。もしくはルーメイの中に、限りなくルオランを感じているのかもしれません。
生き残ったのは、ルーメイか? ルオランか?
色々な意見があると思いますが、私は生き残ったのはルーメイだと思います。
ルオランが亡くなって、ルーメイがルオランのようになったのは、ルオランを失って不安定になったため。
それは双子の姉妹という濃い繋がり以上に、共依存の関係でもあったから。
ルーメイの不安定さは、本来であれば夫のティエルが支えるはずが、ティエルは妻が別人という理由の心変わりをして去ってしまう。
ルーメイは、すべてが自分の存在を否定しているように感じられ、傷心でリョウの元へ向かいます。
ルオランか、ルーメイかの伏線はいくつかあります。
●ルオランと予想できる伏線
・リョウとルオランが出会った場所はプール。つまり、ルオランは泳げるが、ルーメイはカナヅチ。
・ルオランは、ルーメイのためい我慢してきた気持ちが強い。
(本当は自分が女優になりたい)
・リョウにルオランが「ルーメイがいなくなればいい」と語っている。
つまりルーメイになりたいことへの裏返し
・ブランコの傷のことを、ルオランもルーメイも同じように語る
●ルーメイと予想できる伏線
・リョウがモーリシャスの事故のニュースを聞いたとき、蝶が飛んでいる
(ルオランが亡くなったことを示している)
・すべてを失ったルーメイが「私はルメーイではないの?」とリョウに訴える
・リョウがルオランにしたように、手を繋ごうとしても、ルーメイだから伝わらない
・リョウに腕時計を返すとき、リョウの部屋は5分前なのに、腕時計の時間は12時期きっかり
これらの伏線の具体性から、亡くなったのはルオランで、助かったのはルーメイで間違いないと思います。
リョウを演じる三浦春馬
みなさまのツイートより
最近寝る前に毎日、真夜中の五分前を観ながら眠りにつく♡ 何回観ても何回この曲聴いても本当に本当にこの映画が大好き♡♡♡ pic.twitter.com/76QzDDgwJi
— Chisa♡ (@Lovesoharu) October 6, 2015
2014年公開
— myu (@tRyAnjqoKiI2dAG) August 19, 2020
真夜中の五分前
中国語の先生から
「片言で良かったのに」
と言われるくらい
中国語を頑張った
春馬くんです。#三浦春馬 くん
引用元https://t.co/1SVG04hORI @YouTube pic.twitter.com/5yznLtMOyx
一卵性双生児の姉妹と、妹の婚約者の背景は語られますが、主人公のリョウについてはあまり語られない、謎が多くミステリアスな役柄です。
リョウの役が何歳の設定かわかりませんが、異国の国で働くのには、何かしらの事情があったのでしょう。
また時計を五分遅らせる習慣を持つ恋人を亡くして、心に深い傷を負っていることも窺い知ることができます。(習慣をやめられない)
この映画は2014年公開で、おそらく三浦春馬が、24、25歳のころ撮られています。
20代半ばといえば、個人差もあるけれど、まだあどけなさを残しているともいえるお年頃です。
実年齢にしては、かなり謎めいた役どころですが、こういう役は三浦春馬に合っていますね。
物静かであまり喜怒哀楽のない、双子の二役に翻弄される役なのですが、かといって自分の世界はしっかりと持っている男性でもある。
ニットキャップ姿もいいし、スクーターに乗っている姿もキマっていました。
泣いているように見える潤んだ瞳で、リョウは何を考えていたのでしょう。
そのことが気になりました。
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それではまた。
のじれいか でした。