こんにちは。
先日解散した石原プロダクションによる、1970年の映画『愛の化石』。すごいタイトルです。
長年連れ添って化石になりそうな夫婦の話かと思いましたが、愛が終わり心が化石になったという意味。終わった愛に執着し続けたら化石になってしまうといった部分もあるのかも。
主演は朝丘ルリ子。雑誌企画で新進気鋭のテキスタイル・デザイナーの日常を取材・撮影することになった報道カメラマンのお話しです。
古い映画でダメ出ししたくなるところもあるものの、映像はかなりかっこいいですし、思った以上に古さを感じさせない。またファッションやインテリアには痺れました。
ぜひぜひ、おすすめしたい映画です。
ネタバレありで『愛の化石』の好きなところ、残念に感じたところを書きます。
愛の化石
作品情報
製作年度 |
1970年 |
上映時間 |
119分 |
監督 |
岡本愛彦 |
キャスト |
沢由紀(浅丘ルリ子) 日比野三郎(高橋悦史) 原田企画部長(田宮二郎) 庄司ジュン子(渚まゆみ) 荒川編集長(垂水悟郎) 毎朝記者(川地民夫) 並木(寺尾聡) 津久井常務(清水将夫) 沢の秘書(石原佑利子)
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予告
好きだけど別れる・これぞ大人の恋
ロンシャンでテキスタイルデザイナーを勤める沢由紀(浅丘ルリ子)は新進気鋭として注目を浴びる。庄司ジュン子(渚まゆみ)が勤務する出版社の雑誌企画「スターの7日間」で沢を取り上げることになり、庄司の恋人で報道カメラマン、日比野(高橋悦史)に写真を依頼する。
日比野は人の本質を撮ろうとする骨太なカメラマンで、ベトナムから帰国したばかり。実は日比野はベトナムから帰国した空港で、沢の姿を認め、思わずシャッターを切っていました。
沢由紀は、将来のビジョンも明確で聡明な女性だが、プライベートは一切話したくない、写真はすべてチェックして自分で決めるというスタンス。日比野は苛立ちながらも沢由紀のミステリアスな雰囲気に惹かれていきます。
加えて日比野は、若くてキャリアの浅い沢由紀が、短期間で上り詰めたことに興味をもって調べるようになります。
沢の背後には原田企画担当部長(田宮二郎)がついています。沢は元恋人の碧川の後ろ盾で現在の地位を得ました。けれど碧川から一方的に別れを告げられてしまい失意。それでもなお、沢は碧川を忘れられずにいたのでした。
その後、社内の流れが変化し、会社の上層部によって、沢以外のデザイナーの起用が決められてしまって、沢は退職することになります。
仕事も失う流れになるのは気の毒ですが、この辺りで出直すのも悪くない気がします。
沢の本当の姿、沢の抱える悲しみを知った日比野は、日比野が情熱を傾ける場所、ビアフラ(現ナイジェリア東部)への同行を誘うのでした。
骨太な男でも繊細な美人には弱いというところでしょうか。けれども彼女の決断を深追いしない潔さは大人の男らしくてとてもよい。
日比野と庄司の関係も微妙、別れているのか、いないのか、はっきりしません。かつては学生運動に参加していた庄司ですが、出版社勤務で丸くなり沢の要求を当たり前のように受け入れる。そんな庄司のことを日比野は変わったと感じてしまう。日比野って人は、自己主張のはっきりしている女に弱いんでしょうね。
心惹かれても進む道が違うことがわかっているので、無理に深いせず離れる。この映画のテーマは「大人の別れと再生」といったところでしょうか。
会話とキャストがかっこよくてたまらん
働く男女の話なこともあって、会話がとにかくいい。全員がクールで言いたいことをちゃんと言葉にしていますが、みんな大人で相手への思いやりが感じられる。
気の毒なのは、沢と、碧川(登場しない人物)との関係に巻き込まれている原田です。
碧川という沢の元恋人は登場しないので、原田が、碧川の伝達係を果たします。上層部から押し付けられて言いにくいことを沢に伝えさせられたり「もうワンチャンください」と常務に懇願したりで大変そう。
しかも、おそらく原田は沢のことが好き。なかなか碧川を吹っ切れない彼女を思ってなかなかいいことを言います。
「思い出は自分で作るもの、そして、自分で棄ててゆくもの」
か、かっこいい。失恋しても田宮二郎からこんなこと言われたら、立ち直るしか道はねえって感じがしました。
浅丘ルリ子は当たり前ですが、超絶美人。ファッションもカッコよく、マスターカードイエローのフェアレディZに乗っていたりとキメッキメです。
「日比野さんの写真はザラザラしてるわ。面白い写真をお撮りになるのね」
写真を褒めるということは、告白しているのと同じだと思いました。(本当か?)
浅丘ルリ子は、本作が公開前に『愛の化石』という曲を出しています。タイアップなのでしょうか。
高橋悦史も、野生的でギラギラしているけれど知的さもあり報道カメラマンという役柄はぴったりだと思いました。カメラを首から下げる姿が絵になってます。
あと気になったのは、高橋悦史演じる日比野のアシスタント役に寺尾聡が出ているところ。すごく若い。この映画の寺尾聡ははっきりいって小僧です。私に言われたくはないかもしれませんが、現在の渋さの欠けらもありません。
映画で登場するお店をチェックするのが癖。今回も調べてみました。
「Le Dome」
「Kett」
「Siro Kane」
行ってみたいお店ばかりですが、現在も営業しているお店はなさげでした。(あるはずない)
さいごに・残念なところ
映画『愛の化石』について書いてきました。手に届く昔の映画ですが、人はこうして別れを繰り返しながら生きてきたのね、としみじみします。
昔の映画なのに幼稚ではない。登場人物が全員大人なところが素晴らしい。誰かを愛しながらしっかりと立つ姿は美しいですね。
敢えて気になるところを挙げるとすれば、雑誌の発売前日、庄司が沢に見本誌を持参するのですが、雑誌には沢の知らない写真が使われていて、沢は怒りに震えます。でも、そんなことは、まずあり得ない。
初稿で別の写真を入れて、沢にチェックさせ、再校か校了前に差し替えたってこと? アシスタントにチャックさせて沢は見ていなかった? 写真のチェックは自分ですると言っていたが(それは当たり前だと思う)ゲラは未確認ってことでしょうか。ちょっとよくわかりませんでした。
でもお話ですから。そんなことどうでも構わないですね。魅力的ならそれでよしですね。
▼別れの映画たちです。
それではまた。