映画『アイネクライネナハトムジーク』。
三浦春馬・多部未華子、共演映画の第三弾。(二作目はドラマ)
仙台を舞台に、人と人との繋がりを描いたハートウォーミングなヒューマンドラマです。
出会いが友情や恋愛になり、成長して家族になれば、家族のかたちができる。
『アイネクライネナハトムジーク』は、そんな人間同士の繋がりと、時の流れによって変わるもの変わらないものを、やさしいタッチで描いた映画です。
映画を見て感じたこと、ネタバレありで書いていきます。
アイネクライネナハトムジーク
作品情報
製作年度 |
2019年 |
上映時間 |
119分 |
監督 |
|
キャスト |
・ウィンストン小野(成田瑛基) ・織田美緒(恒松祐里)
・藤間(原田泰造)
・久留米和人(荻原利久) ・久留米邦彦(柳憂怜) ・久留米マリ子(濱田マリ)
・亜美子(八木優希)
・斎藤さん(こだまたいち) ・板橋香澄(MEGUMI)
・青年(藤原季節) ・少年(中川翼) |
原作は伊坂幸太郎
予告
悪い人が登場しないので、ストレスなく楽しめる
あくまで私の解釈ですが、この映画はラブストーリーではなく、佐藤の周囲の人間関係を描いた群像劇です。
●佐藤・サラリーマン(三浦春馬)× 紗季・フリーター(多部未華子)
●藤間・佐藤の会社の先輩(原田泰造)
●織田 ・佐藤の友人(矢本悠馬)× 由美・織田の妻(森絵梨佳)・娘の美緒(恒松祐里)
●美緒のクラスメイト、和人・亜美子
●ウイントン小野・ボクサー(成田瑛基)× 美奈子・美容師(貫地谷しほり)
おもにこれらの人物によって構成されています。
ほかに佐藤とウイントン小野が一緒にいるとき知り合った中学生と高校生の姉弟、和人の父母も登場します。みんな淡々と生きていて、悪い人はいません。
佐藤は優柔不断で受け身な性格を、友人の織田や由美から心配されています。
織田はダメ夫のように見えて、恋人の由美の妊娠がわかれば大学を中退し、家族のために一生懸命働いてきた、やるときはヤル男。
そういう織田からすれば、佐藤は大切なものが見えていないように感じられるのかも。
そんな佐藤にも紗季と知り合うことで、ようやく春が訪れます。
同じ頃、美容師の美奈子は、常連客の香澄の弟でボクサーのウィンストン小野との恋が始まりそうな予感です。ウィンストン小野はボクシングのチャンピオンになり、晴れて美奈子に想いを告げます。
そして10年が経過。
2組の男女は、さぞ幸せに暮らしているのかと思えば、そういうわけでもない。心変わりせず、気づけば10年という感じですかね。
子供だった織田の娘、美緒も10年が経過して高校生に成長しています。
美緒の同級生の和人は、父親がゴットファーザー系の恐ろしい人と囁かれていますが、それは、和人の父が時折使っている平和的解決の手法のためで、気持ちは理解できました。
わかるのに10年かかった男
相手に自分の気持ちを真っ直ぐに伝えきれない佐藤は、紗季と一緒に暮らしていながら、結婚のタイミングを逃して10年が経過。ようやくプロポーズを決意したものの、紗季はあまりに優柔不断な佐藤の態度に、このまま結婚していいものか悩むようになります。
一方、ウィンストン小野も、10年前に一度チャンピオンになったきりで、その後は試合に勝てず、美奈子と結婚の機会を逃していました。
10年前に試合に勝てたら、美奈子に告白すると公言していたウィンストン小野は、今度は試合に勝てたらプロポーズしようと考えています。
心に迷いが生じた紗季、紗季が去りそうになって落ち込む佐藤は、2人の出会った場所である仙台駅のペディストリアンデッキで、当時もそこにいたストーリートミュージシャンの歌を聞きながら、かつての二人に思いを馳せるのですが、長く付き合った男女のリアルさが感じられるところといえばその位でしょうか。
佐藤は自分の伴侶が紗季でよかったと思えるのに10年かかった、そう言ってしまうと残念すぎますが、長い年月を経て、恋から愛に進化したと考えれば、美しい物語だといえるのかもしれません。
イマイチなところ・登場人物が多すぎて散漫な印象に
ラブストーリーだというので、大人の恋愛映画を期待していたのですが、実は恋愛のカラミはあまり出てきません。二人の恋愛が見たいとしたら、期待外れになってしまうと思います。
この物語の主人公はいちおう佐藤で、佐藤からから始まる人間関係が展開されていくのですが、約2時間の映画にしては登場人物が多すぎて佐藤の出番も想像したより少ない。いろいろ詰め込み過ぎてしまい、佐藤の感情もしっかり描かれていない印象でした。
原作は伊坂幸太郎の小説で、未読な私にもこの物語で伝えたいことは何かは伝わったと思います。ただ、いい原作をそのまま映像化すればいい映画になるとは限らないことも同時にわかってしまった気がしました。
佐藤もそうなら、もちろん紗季の登場も少なめです。
二人は仙台駅のペディストリアンデッキの上で知り合って恋に落ちますが、同棲生活を始めて10年が経過したというのは、佐藤の友人、織田の娘が成長していることから見えてくるだけ。
10年という時間の流れは相当な年月のはずなのですが、それだけ長い時間を過ごした背景が、佐藤と紗季からは見えてこない。レストランで食事をしてもはしゃいだり会話を弾ませることができず、淡々としてしまうところが、唯一二人の時間の経過を見せている。それでもとにかく生活感のない二人でした。
映画のタイトルから、モーツァルトが流れるのかと思ったらそうではなく、駅のデッキで歌っている人(こだまたいち)の曲が映画全般で流れていました。
さいごに・三浦春馬について
この作品での三浦春馬は、煮え切らないダメな男を上手に演じていて、見ている側を気持ちよくイラつかせてくれます。
これまで見た彼の映画のなかで、作品として最も残念に感じたのが本作品なのですが、それはあくまでストーリーの問題で、三浦春馬のファンの人には、受け身でダメな男を演じているレアな三浦春馬を楽しめるので、別の意味でおすすめできる映画かもしれません。
佐藤は決して悪い男ではなく、心根はやさしいけれど、覇気がない(なさすぎる)非モテ男子。
多部未華子演じる紗季から「10年付き合ったからって結婚するとは限らない」と言われてしまい「そんなこと言わなくても」と下を向いてボソボソ答える佐藤は、よくみればかわいいかも。
この時期とても痩せていて、見ていて切なくなる。だから、この映画に関しては、三浦春馬に似た(ごめん)「佐藤」と思って観たい気持ちにもなったりします。
▼こちらの作品はおすすめです。
それではまた。
のじれいか でした。