映画『天の茶助』は、本作監督の SABUが書いた小説が原作。天界でお茶係をする男が、人間の女性を助けに地上へ降りるファンタジー。
面白いかといえば個人的には楽しめましたが、好き嫌いが別れる話ですね。大人のファンタジーが好きな方にはオススメしたい映画です。
この映画の好きなところ、残念に感じたところを、ネタバレもありでご紹介します。
天の茶助
作品情報
予告
運命は天界のシナリオライターたちに委ねられ
ここは天界。大勢のシナリオライターが半紙に筆で作品をしたためている。彼らが一心に書いているのは地上で暮らす人間たちの運命。
地上で起こるあらゆる出来事は、このシナリオライターたちによって定められていた。
慌ただしくシナリオを書くライターたちに、お茶を配るのは、茶助(松山ケンイチ)。
茶助は、ライターたちの仕事を見ているので、地上の動向に詳しく新城ユリ(大野いと)という一人の女性に恋心を抱く。
ユリは両親の離婚が原因で言葉を話さなくなり、担当のライターが言葉を話せるようにシナリオを書き替えるが言葉を発することはできなかった。
そんなユリが、別のライターがシナリオを直したことで巡りめぐってユリの運命に変化が生じ、車に轢かれて亡くなってしまう。
天国のユリを担当するライターから、ユリを助けることを頼まれた茶助は、地上に降りる。
面白いところ・世界観と登場人物
茶助は地上に舞い降り、天国のシナリオライターの後方支援によって、骨董屋店主の種田(大杉漣)、彦村ジョー(伊勢谷友介)と出会います。
彼らのサポートを受けながら、運命の日にユリを助けだそうとする茶助。
ストーリーや世界観はすごく面白い。ハリウッド映画にもありそうな話ですが、お茶淹れ担当がライターに頼まれてお使いみたいに地上に降りる展開は納得できますし、天国でライターたちが不思議な空間で個々の人間のシナリオを書く場面はユニーク。最初はぐいぐい引き込まれました。
茶助が知り合う人物たちの経歴も個性豊か。茶助は人間の経歴を知っているので、変わった人生を送ってきた彼らの素性が、茶助視線で語られていくのもおかしみがあります。
残念に感じたところ・病気を直して英雄扱いの茶助
彼らのサポートを受けながら、茶助はユリを助けようとするが失敗。当初の目的と好きな人を助けられなかった茶助は傷つきます。
人の運命は天国のシナリオ次第と知る茶助は、人間が不憫でたまらず、病気や怪我に悩む人たちを自分の力で片っ端から治してしまう。実はエンジェルだったの?といった展開です。
茶助は人間に手を貸すうちに瀕死のユリも救うことになりますが、そのあたりからストーリーは流れを変えます。
冒頭の雰囲気から『ベルリン・天使の詩』をイメージする不思議世界感を期待したものの、あれよあれよとバイオレンスな流れへと。
人を助けられる力を持つが、力を使うと消耗する茶助、寺島進の演じる極道の登場、天国から仕込まれた殺し屋などが登場しますが、ストーリーにそこまで必要だったかといえば疑問でした。そういう場面に多く時間を割き過ぎている気がし、脱線気味に感じられたところは残念でした。(あと地上の世界観が退廃的な雰囲気は、好き嫌いが別れるかも)
茶助は人助けの現場をネットで拡散されて一躍有名人に。やがて茶助は人間たちから人を助けを義務化されて追い詰められる。
この話は恋愛映画のようで、実は人生観を描いた話。茶助自身もかつては人間だったことがわかり、どのような人物だったかが、次第に明らかになります。
松山ケンイチは?
天国のお茶係を演じる松山ケンイチは、物語の冒頭ではぼんやりしたお茶係。地上に降りて恋をして、天使になって、前世を思い出すなど忙しい役を演じています。
アクションもありますが、全身のタトゥーがチラ見えする場面はなかなかの迫力。でも松山ケンイチといえば、自然体が魅力な俳優で、自然体だからこそ何でも自分のものにできてしまう不思議な魅力がありますね。
ドラマ『こもりびと』では引きこもりのアラフォー男性を熱演していました。
人を助けたい茶助の生前は? ネタバレあり
茶助は困っている人を積極的に助けますが、実は生前の茶助は極道。闘争で命を落としていました。極道になる前はウエイターをしていて、そのあたりが天界でお茶係をしていたことと繋がります。
最初、茶助が極道だったわかったとき、天国で新たにシナリオが書き換えられたかと思ったのですが、そうではなく茶助自身が歩んだ前世のシナリオそのものなのでした。
茶助は癖の強い妹(玉城ティナ)と再会したことで、だんだん前世の記憶が蘇っていく。
前世の記憶を取り戻した茶助は、悪党たちに命を狙われ、またシナリオを変えたことでユリも狙われている。
けれど結果的には、ユリと茶助は命を取り止め、二人で新しい人生をやり直すという、ハッピーなラストなのでした。
さいごに
ファンタジー映画『天の茶助』をご紹介しました。自分の人生にもシナリオライターがいるのかも……そんなことを考えさせられる映画です。
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それではまた。
のじれいか でした。