映画『シモーヌ』は落ち目の映画監督が、CG女優を作品に起用して、再び返り咲くものの、女優があまりの美しさに想像以上の脚光を浴び、本当のことを話せなくなってしまうというSFコメディです。
この映画の公開は2002年。ここではデジタルアクターと呼んでいますが、日本では1980年代後半からヴァーチャルアイドルは存在していました。当時、欧米ではまだ斬新な存在だったのかもしれません。
今見てもなかなか楽しめました。
『シモーヌ』の面白かったところ、残念に感じたところをネタバレありで書いていきます。
シモーヌ
作品情報
製作年度 |
2002年 |
上映時間 |
119分 |
監督 |
アンドリュー・ニコル |
キャスト |
ヴィクター・タランスキー
エレイン・クリスチャン (キャサリン・ターナー)
レイニー・タランスキー (エヴァン・レイチェル・ウッド) (ジェイ・モーア)
マックス・セイヤー (ブルイット・テイラー・ヴィンス)
ニコラ・アンダーソン (ウィノラ・ライダー) |
シモーヌという女優の魅力をたとえると?
ヴィクター・タランスキー(アル・パチーノ)は、以前はアカデミー賞にノミネートされたこともあるような映画監督だったが、落ちぶれてしまい、人気女優でわがままなニコラ(ウィノラ・ライダー)に振り回された挙句、作品の降板を告げられてしまった。
プライドが高くて自分の考えを変えたくないタランスキーは、元妻の映画プロデューサーのエレイン(キャサリン・ターナー)からクビを言い渡されてどん底になります。
そんなときタランスキーの前にハンク(イライアス・コスティーズ)と名乗るコンピュータの技術者が訪ねてくる。ハンクはタランスキーのファンで、行き詰まっているタランスキーに完璧な女優を再現できるシステムを持ち込みます。
病気だったハンクはそれからすぐ亡くなり、タランスキーにシステムが託される。タランスキーは美しくて演技力もあり、自分の要求に従う、理想の女優シモーヌ(レイチェル・ロバーツ)を作り上げるのでした。
シモーヌ主演で上演されたタランスキー監督の映画は大当たりするのですが、どこにも姿を表さない女優、シモーヌは多くの人から探されることになります。
映画誌のシモーヌへの評価はこんな感じ。
・ジェーン・フォンダの声
・ソフィア・ローレンの肉体
・グレースケリーの優雅さ
・オードリー・ヘップバーンのような天使みたいな顔。
映画がヒットしてタランスキー監督は返り咲きますが、その後はシモーヌを追うマスコミたちへの演出に奔走することになります。
主人公の監督は、ポランスキーなようでそうじゃない、タランティーノのようでそうじゃない、聞いたことがあるような、タランスキーていう名前におかしみがあります。
シモーヌを演じるのはレイチェル・ロバーツなので美しいのは当たり前。なのですが、本物になかなか会えない飢餓感が周囲を狂わせるところは人間の性が出ていました。
加えて元妻、エレインと娘のレイニー(エヴァン・レイチェル・ウッド)らにしても、最初はタランスキーの成功を喜んでいましたが、やがてタランスキーとシモーヌの関係を疑うようになります。タランスキーはエレンに真実を打ち明けますが、誤解されて信じてもらえないなど厄介が続きます。いいことばりは続かないってことですね。
バーチャルっていい!
SFでもバーチャルやAI、アンドロイドものが好きなので、バーチャル(デジタル)アクターはいいなと感じました。役者は誰にでもできて、人間である必要がないと言っているように思われそうですが感じたのその真逆です。
タランスキーはエレンにシモーヌがバーチャルだと説明しますが信じてもらえません。エレンは「役者はみんな想像の化身」と役者の実態について語るタランスキーに答えます。エレンの言いたいこととはずれますが、デジタルアクターであろうと生身の人間であろうと、演じることは現実とは遠い世界を見せること。見せるものは一緒です。
表現者は側で見るより過酷な仕事なはずで、自分とは別の人格になるなんて長く続けていたら精神的に参ってしまってもおかしくない気がしてしまう。
バーチャルではありませんが『ウエストワールド』『エックスマキナ』など主人公が人間ではないSF作品は近年多い。どの話も人間に使われる悲しみが描かれています。
この『シモーヌ』は、シモーヌで復活できたタランスキーも最初は舞い上がりますが、やがてシモーヌの人気が驚異的になってしまい、タランスキーはエレンとレイニーから「シモーヌに利用されている」と言われるようになります。そこでシモーヌが亡くなったことにして鎮静化しようとするのですが、そこでまさかの殺害犯としてタランスキーが逮捕されるという流れに。
コメディ映画なのでハッピーエンドですが、魅了される存在であれば、実態の有無は無関係で尊重されて然り、消滅させる必要はないというラストは好きでした。
名優ぞろいでセンスよし
たぶんこの『シモーヌ』はメジャーかマイナーかといえばマイナーな映画なんでしょう。ですがキャストには、アル・パチーノ、キャサリン・ターナー、エヴァン・レイチェル・ウッドに加えて、女優役にはウィノラ・ライダー、シモーヌの実態を追いかけるマスコミのマックス役に、ブルイット・テイラー・ヴィンスなど名優が出演しています。
監督はアンドリュー・ニコル。アンドリュー・ニコルといえば、名作『ダカタ』や『TIME/タイム』などののSF映画を手掛けている監督です。シモーヌ役のレイチェル・ロバーツは現在、アンドリュー・ニコルと結婚しています。
シモーヌ役のスーパーモデル
— H1R0SH1 (@sardine164) July 13, 2019
レイチェル・ロバーツ。
後に本当にニコル監督と結婚、
2人の子供に恵まれ、
自身も活躍の幅を広げていったそう。
現実でも映画の様に素敵なご夫婦💑#シモーヌ #S1M0NE pic.twitter.com/nhpAEk8GDU
加えて劇中に登場する、屋敷もセンスがよく、乗り回している車も、縦目のメルセデスや、古いアルファロメオなど、クラシックな車がたくさん出てくるので楽しい。
バーチャルを操るのに古い車が好きっていう相反するところも魅力ですね。
さいごに・もはやSFの世界ではない
映画『シモーヌ』について書いてきましたが、現在観てもストーリーとしては全然楽しいし思ったよりは全然古さは感じませんでした。ただそれでもおよそ20年が経過しているので、もはやこの世界はSFとは言えないようにも感じました。
2009年には『アバター』が上映されて話題に上りました。そういう意味ではこの『シモーヌ』はちょっと存在は地味目ですが、2000年代のバーチャルSF映画の皮切り的存在といえるのかもしれません。
▼SF映画にはこんな作品もあります。
それではまた。
のじれいか でした。