映画『クロノス・ジョウンターの伝説』は『黄泉がえり』などを手掛けた作家、梶尾真治のSF小説を映画化した作品です。
主演を声優の下野紘、ヒロインに井桁弘恵。
愛する人を救うために時空を遡るラブストーリー。
いろいろ感じましたが、世界観は好きでした。『クロノス・ジョウンターの伝説』感想をネタバレありで書きます。
クロノス・ジョウンターの伝説
作品情報
製作年度 |
2019年 |
上映時間 |
87分 |
監督 |
蜂須賀健太郎 |
キャスト |
吹原和彦(下野紘) 来美子(井桁弘恵) 藤川(尾崎右宗)
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予告
公式
平凡な出会い、実は非凡な日常
1995年、吹原和彦(下野紘)は住島重工の開発部門勤務の技術者で、これといって不満はないけれど、同じことが繰り返される日常を退屈に感じていました。
そんなとき和彦は、勤務先近くの花屋で働く来美子(井桁弘恵)に一目惚れします。和彦は客として店を訪れてふたりは親しくなります。恋の始まりはいたって普通です。
当時、和彦の会社は「クロノス・ジョウンター」という物体を過去に送る装置の開発を進めていました。時間軸を圧縮させて過去をたぐり寄せ、任意の過去に物体を送り込めるというものです。
実験で「クロノス・ジョウンター」で静物を移動させると空白の時間があることがわかります。過去に送ることは成功できましたが、戻って来るのは現在ではなく未来だったのです。
その夜、会社で同僚の藤川(尾崎右宗)と話していた和彦は衝撃音に驚きます。会社の近くでタンクローリーが衝突して爆発事故が起きたのでした。
事故現場は来美子の働く花屋の前。和彦は来美子が事故に巻き込まれたことを知ると、まだ不安定なクロノス・ジョウンターを使って来美子を助けに向かいます。
1995年にタイムマシンの研究をしている技術者が、退屈で平凡な日々を過ごしていると感じているところは面白い、全然平凡ではないと思いますが。和彦はただただ愛を求めている男なのかもしれない。
「人類初の発明などは、案外、個人的な想いで飛躍的に向上するのかも」
同僚の藤川の言葉です。確かに技術者は、自身の必要にかられてこそ、能力を発揮するということもあるかもしれませんね。
自分の居場所を棄てても守りたい存在
和彦は「クロノス・ジョウンター」で過去に戻って来美子に接触します。
タンクローリー火災が起こる40分ほど前。
事故が起こる前、和彦は来美子にブローチを贈っていました。お返しにと来美子から食事を誘われ、和彦と来美子の未来はこれから始まろうとしていました。
来美子と接触できても来美子は和彦の説得に応じません。(そこが微妙)
やがて来美子の目の前で和彦の体は消え、現在からは1年8ヶ月も先に戻ってしまう。それでも和彦は諦めずに来美子に会おうとします。和彦は来美子のために日常を手放してしまうのでした。
藤川が和彦にクロノス・ジョウンターの実験結果を教えてくれました。
クロノス・ジョウンターの法則
「一度過去に送ったものは、その滞在時間より過去へ戻ることはできない」
「一度過去に送ったものは、戻るとき一度目の4倍の時間がかかる」
大変な制約のなかで、和彦は繰り返し来美子の前に現れます。
1年8ヶ月後、7年後、63年後に戻ってしまっても。
そして今後、来美子に会いにいけば、和彦は西暦6090年に戻ることに。そうなって和彦は平凡な時間の大切さを知るのでした。
映画の冒頭の言葉が、和彦と来美子の気持ちを指しています。
あの人が私を愛してから、自分が自分にとってどれほど価値あるものになったことだろう。(ゲーテ)
さいごに(ダメ出しも)
『クロノス・ジョウンターの伝説』。ロマンチックなSFラブストーリーでした。
言いたいことは伝わった気がします、また、淡々とした日常もよく描かれていたと思います。愛する人を救うため自分を棄てる覚悟も。
でも二人の結びつきがそこまで思い詰めるほどの関係だったろうかと少し疑問。まだ浅い関係だったからこそ和彦は純粋に愛に燃えることができたとか?
設定で細かいことを言ってしまえば、1995年当時、薄型の液晶はまだないはず、など時代の風景はあまり描けていない。ただ和彦の同僚で愛妻家の、藤川が離婚して会社は退職しているなど登場人物の変化で伝わりる部分は大きい。
声優の下野紘は思い詰めた表情に説得力がある。
井桁弘恵は透明感があってかわいくてよきです。
恋をしているときに観るといい映画ではないでしょうか。
それではまた。
のじれかでした。