こんにちは。 のじれいか(@noji_rei)です。
映画『あしたのパスタはアルデンテ』(Mine vaganti)は、イタリアのパスタメーカーを経営する家族の姿を描いたコメディドラマです。
後継者になりたくない次男が、兄の思わぬ暴走で、否応もなしに会社の事業に巻き込まれてしまうのですが……。
イタリア人は家族を大事にすることで有名ですが、そんな彼らでも色々あるのね。家族と個人について考えさせられる物語でした。
深みのあるコメディ
イタリアに行きたくなっちゃった〜
ストーリーについて、感想をネタバレありで書きます。
よろしければ、お付き合いください!
【映画】『あしたのパスタはアルデンテ』
作品情報
監督:フェルザン・オズべテク
2016年 107分
<キャスト>
・トンマーゾ・カントーネ(リッカルド・スカマルチョ)
・アントニオ・カントーネ(ニコール・グリマウド)
・ビィンチェンツオ・カントーネ(アレッサンドロ・プレツィオージ)
・アルバ・ブルネッティ(ニコール・グリマウド)
ストーリー
カントーネ家は、南イタリアの都市レッチェで、老舗パスタメーカーを経営している。
次男のトンマーゾは、普段はローマに住んでいるが、兄のアントニオが社長に就任するため帰省した。
社長就任の食事会の前夜。トンマーゾはアントニオに、勉強しているのは経営ではなく文学で、小説家を目指していること、そしてゲイなことを打ち明ける。そして明日、このことを家族に話すつもりだも。
すると翌日ディナーの席で、トンマーゾの先手を打って、兄のアントニオが自分はゲイだとカミングアウト。一同は騒然となり、怒った父はアントニオを追い出してしまう。
アントニオの告白により、ローマに帰れなくなったトンマーゾは、アントニオに代わり会社で働くことに。
しかしトンマーゾにはローマに恋人がいるが、ショックで倒れた父や、狼狽える母のことを考えると「実は自分もゲイで」とは言い出せない。
アテにし期待を寄せていた、長男アントニオに代わって、父の期待を一心に受けることになったトンマーゾは、共同経営者の娘アルバと共に、パスタ工場の仕事に励むことになった。
好きなところ
次男の困惑とやさしさがよく出ている
次男のトンマーゾは、密かに兄のアントニオにゲイであることを打ち明けます。するとアントニオは、そんなこと言ったら追い出されるだろうとニヤニヤしている。
それなのに蓋を開けてみれば、まさかの兄のアントニオの抜け駆け。父は心筋梗塞で倒れ、まさか放っておくこともできず、トンマーゾが会社の経営をすることになってしまう。
父親は人の良い男性ですが、ワンマンで古いタイプの人だから、息子がゲイという事実は受け入れ難い。それは母親も一緒です。
そんな両親のために、我慢をし続けてきたアントニオも限界だったのかもしれない。
トンマーゾからすれば、会社と家族を押し付けられた格好ですが、この人はやさしいので、自分までゲイ告白をしたら父親が死んでしまうと、仕方なく沈黙を守ることになります。
祖母の存在が効果的でよい(ネタバレあり)
映画のオープニングで、ウエディングドレスを着た美しい女性が登場し、何やらピストル片手に男性と揉めています。
これが誰かといえばカントーネ家のゴットマザー。創業者の妻で、トンマーゾの祖母にあたる女性の若き日の姿であることがわかってきます。
彼女は会社を創立してここまで大きくしてきましたが、その分、自分の幸せを犠牲にしてきた。だから彼女は、自分の孫たちに同じ思いを強いることを望んでいるかといえば、そうではない。
ときにすべてを壊すことも必要だと考えている。
経営はトンマーゾの父に譲っているため、口うるさいことを言うわけではないけれど、折々に触れて、トンマーゾにアドバイスをします。
それは彼女自身が、今でも犠牲にしてきた思いを大切に心に寄り添わせているから。
人生は一度きり。すべてを感情任せにはできませんが、かといって家族のためにすべてを犠牲にもできない。現代に生きるには、個人と家族のバランスが大切だよね、と考えさせられるところが多々ありました。
ラストで祖母が亡くなり、それによって父と息子たちは歩み寄る。一度は勘当された長男も再び一緒に協力していくであろうことを想像させつつ、物語は終わります。
アルバの役割も魅力的(ネタバレあり)
トンマーゾはパスタ工場で働くにあたり、共同経営者の娘アルバと行動を共にするようになります。
アルバは仕事ができて気の強さのある女性ですが、母を亡くし家族には恵まれていない。そういうコンプレックスから自分の性格に問題があると常々考えていて、見た目とは異なり、自分に自信がなかったりします。
そして密かに、トンマーゾに思いを寄せている様子ですが、いつまで経っても戻らないトンマーゾに会うため恋人が訪れており、なんとなく現実を知ることになる。
家族に振り回され自由を求めるトンマーゾと、孤独な影を抱えるアルバの立場が対比的に描かれていました。
監督自身と重なる物語(ネタバレあり)
映画の冒頭で、父に捧げる、といったテロップが出てきます。この物語は監督が、家族に捧げている物語らしいのです。
この映画を手がけたフェルザン・オズべテクは、トルコ出身の映画監督。自身もゲイで現在はイタリア在住だそう。イタリア人家族を、自身の家族にどこか置き換えるようにして、書かれた物語であることが想像できます。
残念だったところ
タイトルがキツイ
ちょっと邦題がダサすぎます。
パスタはいつでもアルデンテ、のはず!
▼家族の絆が描かれる映画はこちらにもあります!
それではまた。のじれいか でした。