映画『フィールド・オブ・ドリームス』。
農園を営む、野球ファンの男の耳に聞こえる、幻のような声。男はその声に従って行動すると、そこに現れるのは……。
ケヴィン・コスナー主演のファンタジーで、一度は観るべき名作映画と言い伝えられています。
ストーリーと感想をネタバレありで書きます。
フィールド・オブ・ドリームス
作品情報
製作年度 |
1989年 |
上映時間 |
107分 |
監督 |
フィル・アルデン・ロビンソン |
キャスト |
レイ・キンセラ(ケビン・コスナー)
シューレス・ジョー・ジャクソン(レイ・オリッタ) テレンス・マン(ジェームズ・アール・ジョーンス)
カリン・キンセラ(ギャビー・ホフマン) ジョン・キンセラ(ドワイヤー・ブラウン) |
謎のメッセージ①「造れば彼がやってくる」
アイオワでトウモロコシ畑を経営するレイ・キンセラ(ケヴィン・コスナー)は父が野球を志したこともあって野球ファン。
妻のアニー(エイミー・マディガン)と娘カリン(ギャビー・ホフマン)と幸せに暮らすレイの耳に、ある声が聞こえるようになる。
「造れば彼がやってくる」
最初のうちレイは、言葉の意味がわからない。アニーや仲間に打ち明けるが、アニー以外は本気で取り合おうとしない。
そんなとき、畑にいたレイは声を聞きながら、畑の中に野球場を造れというメッセージだと気づきます。
畑に野球場を造れば、往年の選手たちが現れるはずだ。レイはアニーを説得して畑を潰して野球場を造ってしまう。でもレイ一家は、農場を趣味でやっているわけではないので、畑を潰した分、収穫が減りローン返済に苦しむことになります。
アニーは妻の鏡みたいな女性で、愛する夫のためにできる限りのことをしたいと協力的ですが現実もある。レイを愛しているにしても、なんて付き合いのいい女性でしょう。多くの妻はきっと離婚を選ぶはずです(私なら)。
そんなときレイの野球場に往年のスター選手、ジョー・ジャクソン(レイ・エリオット)の霊が現れます。
ジョーは翌日、仲間を連れて現れ、ベースボールスターたちが、レイの造った野球場で練習を始める。レイは大喜び、アニーも娘もレイに寄り添います。
ただ彼らの姿は、レイの家族以外には見えないのでした。
謎のメッセージ②「痛みを癒せ」ネタバレあり
野球選手たちの来訪を歓迎するレイとアニーですが、今度は「痛みを癒せ」という声が聞こえ、レイは首を傾げます。
ある日、PTAの会合に出かけたレイとアニーは、作家のテレンス・マンの著書が批判されるのに遭遇。アニーは作風を批判する権利はないはずと父兄と口論に発展。レイとアニーはバークレイの同級生なので、アニーはただの農家の主婦ではない。自分の意思を持って行動していることが窺える場面です。
レイは「痛みを癒せ」という声のメッセージに作家テレンス・マンが関連していると調べたところ、マンの小説にレイの父親が登場していることを突き止めるのでした。
どうしてもテレンス・マン(ジェームズ・アール・ジョーンズ)に会いたいレイは、マンを訪ねてボストンへ向かってしまいます。
マンは市民運動に破れて疲れいて、最初はレイの訪問を嫌がります。レイはなんとかマンを説得してレッドソックスの試合に。すると客席から見える電光掲示板に昔の野球選手の名前を見た二人は、一緒にムーンライト・グラハム選手を探すことに。
しかしムーンライト・グラハムは16年も前に亡くなっている。グラハムは生前、優秀な医師でもあり人格者として地元で愛された紳士だったことがわかります。
夜の街を歩くレイは、なぜか1972年にタイムスリップ。そこで晩年のグラハム医師(バート・ランカスター)と遭遇したレイは自分の野球場へ招待するのですが、老いたグラハムは地元を離れるのを嫌がります。
翌日、アイオワのレイの家に向かう途中、レイはヒッチハイクした少年を乗せるのですが、実は彼こそ若き日のグラハム選手でした。
帰宅したレイを待っていたのは、グラウンドに増えている選手たち、そこにグラハムも参加。レイとアニー、そしてマンは、野球の試合を観戦します。
父とキャッチボール・ネタバレ
ローン返済が滞るレイは、畑の売却を迫られて窮地に立たされますが、選手の姿が見える大勢の人が入場料を払ってレイの野球場を訪れることになり、その件は解決です。
作家のマンは、選手たちが出入りするトウモロコシ畑の先へと誘われて、そちらの世界へ向かいます。すなわちそれは死を意味するのでしょうが、この話では生死が曖昧な感じなので笑顔で別れます。
やがて野球場にはレイの亡き父が若いときの姿のまま現れて、二人でキャッチボールをするのでした。
曖昧な主人公の行動を現実の選手が支える・感想
久しぶりの再見でしたが、改めて見直してみると昔の印象とは違うところもありました。
トウモロコシ畑を所有するケヴィン・コスナー演じるレイが、謎の声に導かれ野球場を造るまではストーリーの前段。ジョー・ジャクソンを始め、かつての大リーガーたちがトウモロコシ畑を掻き分けながら野球場にやって来るようになった。そこから先が物語の始まりとも言えます。
レイと父は、八百長問題で野球嫌いになったレイと、野球選手への夢を息子に託した父とで衝突して断絶。レイは、ジョー・ジャクソン選手の八百長野球事件も嘘と気づきながら、打ち解けられぬまま父は亡くなった。その辺りが主人公レイの葛藤です。また球場を造ることで経済的負担を強いられながらも、自分の思いを貫くことで叶う夢もあるという繋がりもあります。
そしてレイ自身が父との関係を球場で再確認するように、ジョー・ジャクソンら亡くなった選手たちの魂を昇華させている部分も大きいと言えるのでしょうね。
登場人物は、作家のテレンス・マンはサリンジャーがモデルだそうで、トーマス・マンをもじったような名前で登場しますが、選手たちは実在の人物です。
実際にジョー・ジャクソンは『ブラックソックス事件』という八百長疑惑で球界を去りっているし、ムーンライト・グラハムも往年の名選手。ここではグラハムをバート・ランカスターが味わい深く演じています。
レイが幻のような声に導かれて行動するのは、レイ本人も言うように、動機が微妙というか奇異に思え、下手をすれば取り留めなく感じてしまいそう。それを実在の人物を置くことで物語が引き締まり、多くの人に共感される作品になった気がしました。
それとこの作品は何といってもキャストがいい。
レイの妻、アニーを演じているエイミー・マディガンは1984年公開の『ストリート・オブ・ファイヤー』で男勝りな兵士を演じていますが、まるで別人。
娘役のカリン役のギャビー・ホフマンは本作品で注目を浴びました。本当にかわいい。現在は立派な大人の女優として活躍しています。
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それではまた。
のじれいか でした。