自分の人生こんなはずじゃなかった、そんな風に感じてしまう人は多いと思います。
むしろ思いどおりに生きていると感じる人の方が、少ないのではないでしょうか。
『ブロークン・イングリッシュ』は、仕事も恋も今ひとつで停滞している、30代独女が主人公の恋愛映画。
そこまで有名な俳優が出演しているわけではなく、ストーリーも完璧とは言い難い。好き嫌いが別れる話なのですが、キラキラ恋愛ストーリーとは違って、主人公のグダグダしたところや、依存的な性格など生々しい魅力があって、個人的に好きな作品です。
『ブリジット・ジョーンズの日記』が好きな人は楽しめるかも。
この映画のどこがいいのか? 残念ところは? について、ストーリーと共に解説していきます。
よろしければ、最後までお付き合いください。
ブロークン・イングリッシュ
作品情報
アメリカ、フランス、日本 2007年 98分
監督:ゾーイ・カサヴェテス
キャスト:パーカー・ポージー、メルヴィル・プポー、ドレア・ド・マッテオ、ジーナ・ローランズ
監督のゾーイ・カサヴェテスは、アメリカの俳優・映画監督、ジョン・カサヴィスの実の娘。
本作で主人公ノラの母、ヴィヴィアン役を演じた、ジーナ・ローランズは実母。
予告
ストーリー
ニューヨークのホテルでVIPを担当するノラ(パーカー・ポージー)は、キャリアウーマンだが、仕事にやりがいを感じられない。周囲は結婚適齢期で結婚していくのに、ノラは男運が悪いのか失敗を繰り返し、酒と安定剤に頼る自堕落な生活を送る。
あるときノラはパーティで、年下のフランス人、ジュリアン(メルヴィル・プポー)と出会う。ジュリアンとノラは急接近するが、ノラはあれこれ心配してしまい、恋を楽しむことができない。
仕事を終えたジュリアンは帰国が決まり、ノラに一緒に帰らないかと誘うが、出会ったばかりのジュリアンについて行くことはできないと、ノラはニューヨークに残り、また一人になるのだった。
好きなところ1・恋に悩む生々しい感情(ネタバレあり)
ノラは育ちのよい女性。母や親戚、友人たちは、ノラにパートナーができないことを心配して世話を焼きます。通常だと「私に構わないで!」となりそうですが、ノラは友人との食事会に出席し、母から友人の息子を紹介されれば会いにも出かける。でもいい出会いに繋がりません。
ノラは自分から誰かを好きになるより、自分を愛してくれる人を待つ、受け身なところがある。だからアルコールの力を借りて後悔することも。宿泊客の俳優から食事に誘われ、飲んだ勢いで関係を持ち、ノラは付き合っていると認識しますが、俳優には本命の恋人がいるとわかる。誘われて何となくその気になったのを恋だと勘違いするのはよくあることです。生々しい恋模様や、ノラのちょっとだらしのない生活感が、何だか共感できるなとしみじみさせられます。
好きなところ2・外国人との恋愛事情
結婚がしたいノラからすれば、外国人で年下のジュリアンは、好条件の相手とはいい難い。それは、アメリカ人のノラとフランス人のジュリアンが、会話の中でちょっとした遣り取りを聞き違えることからも伝わります。
そんな状況だから、ジュリアンから一緒にパリに来ないかと誘われ、断る気持ちはよくわかる。ジュリアンのパリへの誘いは、遊びに来ないかではなくて、パリに生活拠点を移さないかというお誘いに近い。
これが10代や20代前半だったら違ったかもですが、恋愛が全てとはいえないお年頃のノラの気持ちは理解できる。それにたぶんジュリアンは結婚なんて考えていないはず。
けれどジュリアンが去り、日常が戻ったノラは、ジュリアンのいない生活が耐え難くなり、仕事を辞めてパリに行くことに。これまで恋愛を求めながら、恋に消極的だったノラが漸く動きだしますが、そう簡単には幸せにはなれません。
好きなことろ3・一人で行動する(ネタバレあり)
ジュリアンを追って、友人のオードリー(ドレア・ド・マッテオ)とパリを訪れるノラでしたが、ジュリアンの連絡先を書いたメモを失くしてしまい、ジュリアンを探すのを断念します。せっかくパリに来たのにと、最初は落ち込みますが、わりと簡単に立ち直って(開き直って)しまう。
せっかく来たのだからパリを満喫して行こうと、一人帰国を遅らせパリの休日を楽しむところが好き。
ノラはこれまで恵まれた暮らしをしてきたのでしょうが、大きく道を踏み外したり、思い切って一人で行動したことがなかったはず。自立したキャリアウーマンのようで、精神的に自立できていなかったのが、この機会に小さな一歩を踏み出せたのかもしれません。
結局、帰国当日、空港に向かう電車の中で、ノラはジュリアンと再会します。ノラは飛行機には乗らないし、しばらくパリに止まるかもしれない。だけどおそらく、ニューヨークに帰って自分の新しい生活を構築していくことになるんじゃないかなーと個人的には予想しています。
好きなことろ4・主人公を取り巻く人間関係がいい
主人公は独女ですが、彼女を取り巻く人間模様も見逃せません。ノラの母のヴィヴィアン(ジーナ・ローランズ)は、ノラの父、つまり夫亡き後もたくさん恋をして現在は再婚している。「今の女性は大変よね、自由になったし職業も自由に選べるようになったけど、あまりに広すぎて目移りしてしまいそう」母がノラに漏らした言葉は、私自身、聞き覚えのある言葉。
またパリに一緒に行った親友オードリーは、誰もが羨む結婚をしたが、結婚生活に暗雲が立ち込めてもいた。結婚イコールゴールではない。結婚生活は続けるのが大変。そのことについても描かれています。
好きなことろ5・ジュエリーがかわいい
ノラのファッション、特に、必ずネックレスをつけているのですが、それがかわいい。二連を組み合わせていたり、ちょっと凝ったペンダントヘッドをつけていたりと、目を引きます。ジュエリー好きなら絶対に気になってしまうはず。
タイヤックのネックレス?
エンドロールを目を皿のようにしてみましたが、確認できませんでした。女性監督の映画は細やかさがあって好きですね。
残念に感じたところ・職場風景が今ひとつ
ニューヨークのホテルの顧客担当にしては、ノラの日常に緊張感が感じられません。接客業、しかもVIPを相手にする日々であれば、安定剤やアルコールに依存したくなる気持ちもわかる気がするのですが、そこはあまり描かれずにオフィス風景も雑。あまり働いているように見えないのが残念でした。
恋愛映画のおすすめはこちらにも。
※本記事の情報は2021年5月時点のものです。
最新の配信状況はサイトにてご確認ください。
それではまた。
のじれいか でした。