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【ドラマ】『わたしを離さないで』叶わない夢を願うこと【ネタバレ・感想】

『わたしを離さないで』はノーベル文学賞を受賞した作家、カズオ・イシグロの小説「Never Let Me Go」の連続ドラマ版です。

クローン人間や臓器提供をテーマにした問題作です。主演は、綾瀬はるか、三浦春馬、水川あさみ。原作の舞台はイギリスですが、ここではすべて日本に置き換えています。

あまりに重いテーマなため、放送当時は見るのを躊躇してしまったのですが、Amazon Primeで全話通して見たので、ネタバレありの感想を書いていきます。

 

 

 

わたしを離さないで

 

 

『わたしを離さないで』をAmazon Primeで見る

 

番組情報

 

原作:カズオ・イシグロ
放送日:2016年1月15日〜3月18日・金曜22:00〜22:54 金曜ドラマ
放送回数:全10話

キャスト

■陽光学苑の生徒たち
保科恭子(綾瀬はるか)(幼少期)
土井友彦(三浦春馬)
酒井美和(水川あさみ)
遠藤真実(中井ノエミ)
遠藤真実(水崎綾女)
珠代(馬場園梓)
加藤(柄本佑)

■陽光学苑の教師
神川恵美子(麻生祐未)
山崎次郎(甲本雅裕)
堀江龍子(伊藤 歩)

マダム(真飛 聖)

 

予告

 

www.youtube.com

 

誰かのために生きる人生をどう生きるか

 


#1 ドラマ史上最も哀しい運命…衝撃の結末へ愛しく儚い命の果ての希望とは

 

ドラマは小説と若干設定が違いますが、大きな違いはありません。子供の頃、寄宿学校で共同生活を送るところから始まり、現在と過去が去来しながらストーリーが進みます。


人里離れた場所にある陽光学苑では、複数の幼い子供たちが共同生活を送っている。質素だけれど人間らしい暮らしに見えるものの、授業のカリキュラムが少しおかしく、閉鎖的な雰囲気が漂います。

 

陽光学苑長の神川(麻生祐未)山崎次郎(甲本雅裕)は、子供たちをコントロールして従順に育て、外の世界の人間たちが望む臓器提供者にさせることを考えている。なぜなら陽光学苑の子供たちは全員、臓器提供のために造られたクローンだからです。

 
神川は生徒たちに現実を打ち明けるとき「あなたたちは天使です」と人間側の都合のよい言葉で説明します。新任教師の堀江龍子(伊藤 歩)はそんな神川や山崎のやり方に絶望して、やがて精神を病んでしまうのでした。

クローン、アンドロイド、AI、または人間が何かの目的で育てられる物語は多く存在しています。 

●約束のネバーランド(人間)

●アイランド(クローン)

●ブレードランナー(AI)

●エックスマキナ(AI)

●ウエストワールド(AI)

  

noji-rei.hatenablog.com

 

多くの物語は自分たちの運命を知った時点で闘いを始める。または脱出劇が始まるものですが、これらと『わたしを離さないで』の大きな違いは、よくある「運命に逆らい反逆」▶︎「自由を求めて戦い」▶︎「勝利・または敗北」という流れではないところ。入り口が似ていますが、その後に続くテーマが違います。

・誰かのために生きること
・限りある人生をどう生きるのか
・命あるものは必ず終わりがあること
・生きるには愛が必要


『わたしを離さないで』のテーマはそこにあります。

 

原作とは異なる争う者たち

 

『わたしを離さないで』の興味深いところは、運命は変わらない前提があるところ。神川ら陽光学苑の教師たちの教育方針もありますが、それ以外のもっと大きな力によって自分たちは管理され、臓器提供を免れることは不可能であることを悟っていきます。

脱走したら「即時解体」と脅されているのも理由の一つではあるのですが。

原作や映画では、運命に逆らわず、自分たちの運命を比較的おとなしく従順に受け入れますが、ドラマでは恭子の友人、遠藤真実(中井ノエミ)らが権利を求めて活動しますが、虚しい結果に終わります。

 

もしかしたら運命は変わるかも、そんな可能性(希望や夢)を抱く部分はあるものの、基本的には運命を受け入れる。そこが悲しい。
 

卒業後の矛盾

 
幼少期の彼らは、神川から外の世界は恐ろしいところだと教わり、外界への恐怖心を「これでもか」というほど植え付けられています。
けれど成長した彼らは、陽光学苑を出て外で暮らす日が訪れます。

クローンのなかではエリートの陽光学苑の生徒は「ほかの場所で育った提供者」に比べると色々優遇されていますが、介護人として提供者のケアを任せられ、その後は自分の提供が待っている、その流れは一緒です。


成長した彼らはこの矛盾を彼らはどう捉えたのでしょう。陽光学苑の外に出られたことは嬉しそうでしたが、それが何を意味するのか、勘が鋭くて賢い、真実(中井ノエミ)などは気付いている様子でした。

 

引き離される二人

 

恭子(綾瀬はるか)はやさしくしっかり者で、幼少期の頃、いじめられていた土井友彦(三浦春馬)のことを何かと気にかけている。陽光学苑で大切な授業は美術。美術部の顧問、山崎(甲本雅裕)は、彼らに広い知識は必要なく、一人でできて孤独に耐えるのに最適であると学苑の授業では美術に主軸を置いています。そこで絵が苦手な友彦は虐められていました。


友彦も恭子に心を寄せていきます。学苑では定期的に外の世界のものを購入できる販売会があり、そこで友彦は恭子にCDを贈ります。CDのジャケットに偶然「kyoko」と誰かの名前が入った中古の贈り物を恭子は喜び、陽光学苑でもらったカゴにしまいます。

 

原作では「Never let me go」のカセットテープでした。

 

自己顕示欲が強い、美和(水川あさみ)は見栄っ張りで虚言癖があって周囲を疲れさせる。最初、美和は、美術部顧問の山崎に好意を寄せますが、山崎は彼らを人間とは思っていないので強く拒絶されてしまうのでした。


山崎に拒絶された美和は、今度は恭子と友彦の間に割って入ります。友彦を強引に自分の方に引き入れたことで、3人の関係は決裂します。


美和に友彦を奪われた恭子は、美和への怒りを封じ込め、苑を出た後には、同じ場所(コテージ)で暮らすようになります。美和は友彦を奪っただけでは足りず、自分と友彦の関係を恭子に見せつけます。それは恭子にとって最悪な日々でした。


恭子はコテージの中だけの狭い世界で恋愛に興じる住民たちに不満を感じ、限りある時間に何をすればいいのか焦りと不安を募らせます。それでも結局は寂しさから別の相手と付き合いますが、彼が介護人になってコテージを出てたことで、恭子はまた一人になります。

 

提供者と介護人として再会(友彦と恭子)

 
美和に隠れて、恭子と友彦が会っていたのがバレて、口論の果てに恭子がコテージを去ってしまい3人はバラバラになります。その後、月日は流れて、恭子は介護人として日々を過ごすなか、既に友彦と美和は提供が始まっていました。

美和が提供者として生命を全うして、やっと美和は友彦の介護人として一緒に暮らすようになります。ようやく訪れた二人の時間でしたが、友彦はすでに2度の提供をしている身、時間はあまり残されていません。そのとき、恭子と友彦は、本当に愛し合っている二人には提供の猶予が与えられるという淡い夢にすがります。

本当に愛し合っていて、絵が上手であることが猶予の条件という噂。友彦に送られた堀江先生(伊藤 歩)からの手紙でも同じようなことが綴られていました。

それは彼らの微かな生きる希望でした。「期待しては裏切られる」と恭子が言うように、彼らは静かに何かを諦めながら生きてゆくのでした。

 

猶予期間はあるのか?

 

叶わない夢でも、夢はあった方が幸せなのか

恭子と友彦の2人は、神川先生に猶予を頼みに行きます。神川先生はクローンの技術者だった博士の娘ですが、実は神川先生自分自身も博士の妻のクローンでした。そのためクローンたちの学校をつくり、クローン人間にも知識や学問を学ばせることで優秀な介護人を育てあげようと考えたのです。

ですが今の神川先生に猶予の権限などありません。やはり猶予は夢でしかなかったのです。

 

三浦春馬の優柔不断さと魅力

 

陽光学苑を出て美和と付き合いだしても、友彦は恭子が好きでした。それなら恭子が去ったとき、追えばいいのに何故と疑問が残ります。

幼いとき、恭子は友彦から贈られたCDを失くしますが(美和が隠している)が、同じものを友彦が恭子に贈り、今度は美和に隠れて友彦と恭子は会うようになります。

性格に癖のある美和に引っ張り回されるのは見ている方も一緒で、どうしても美和の話になってしまう。ですがラスト9話・10話は恭子と友彦の二人の世界です。

友彦の三度目の提供が決まりますが、それは死を意味している。もし助かっても過酷な後遺症に悩まされて四度目の提供になるだけ。友彦は荒んで恭子にも当たるようになるものの、やがて恭子と一緒にいられたことは幸運であり、自分は幸福だったと言いながら提供にのぞみ、生命を全うするのでした。

 

三浦春馬が演じた友彦の優柔不断さに最初は苛立ちますが、それは物事をあまり深く考えず楽観的なところがあるからなのでしょう。真面目な恭子が惹かれる理由もわかるような気はします。友彦は前半は曖昧な役柄ですが、後半では命の終わりに乱れる様を三浦春馬はみごとに演じています。

 

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おわりに

 

臓器移植やクローンへの倫理観、生死などあまりにも重いテーマを扱うドラマなので、わたしは放送時は見ることができませんでした。

原作を読み、映画も見たので内容がわかっていて、これを10話も見るのはしんどすぎると思ったからです。

 

ある意味映画の方がマイルドといえる。


けれど全編を身終えてやはり見てよかったと思いました。内容としては映画よりも時間が長いぶん、エピソードや盛り込める世界観も多く描かれます。神川先生が実はクローンだったこと。そのクローンの神川先生が病院で「臓器提供(貰うこと)を希望しますか」と医師から尋ねられる皮肉なシーンも入っています。これらは原作にはありませんが、全体のテイストはまったく壊れていないのは見事です。
 

世の中が便利になると弊害や歪みが生じるのは世の常。クローンが社会に取り入られていくことは、今後十分にあり得そうです。『わたしを離さないで』では、提供者は人間と見分けがつかないのにのに背負わされた運命は過酷。それでも生まれた方がよかったと言い残して友彦は去っていく。幼いときは反抗的に感じた陽光学苑での教えは、現状と彼らが誕生した目的に沿えば正しい教えともいえるところが悲しい。


神川先生が恭子と友彦に「一度便利なったものは手放すことができない」と話すように、当たり前になってしまったことは、簡単にはやめられないのも肯けます。
未来への警鐘を鳴らすストーリーでした。


もし現在、何か満たされない思いを抱えているのなら、ぜひ、見てほしいドラマだと思います。

それではまた。
のじれいか でした。