映画『GO』は窪塚洋介主演の2001年の映画。
在日朝鮮人の高校生が、人種問題と友情と恋に葛藤する姿が描かれています。
懐かしく感じる部分と普遍的な部分があり、両方で楽しめる作品でした。
GO
作品情報
製作年度 |
2001年 |
上映時間 |
100分 |
監督 |
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キャスト |
杉原(窪塚洋介) 桜井(柴咲コウ)
道子(大竹しのぶ) 秀吉(山崎努) タワケ(山本太郎) 元秀(新井浩文) 加藤(村田充) 正一(細山田隆人) タクシー運転手(大杉蓮) 金先生(塩見三省) 巡査(萩原直人) |
好きなところ・走る男は魅力的
在日韓国人の杉原(窪塚洋介)は、喧嘩や悪いことに情熱を傾け、先輩のタワケ(山本太郎)、同級生の元秀(新井浩文)たちと危険なことに興じている。
友人たちからは「クルパー」と呼ばれ単純そうに見える杉原だが、秀才の友人、正一・ジョンイル(細山田隆人)の影響で読書が好きで、知的好奇心も持ち合わせている。
そんな杉原は中学まで民族学校に通っていたが、高校は日本の高校に進学することを決める。視野を広げようという考えからだったけれど、その結果、日本の学校に通うことで韓国人から避難され、日本人からは外国人と差別される。
決められた枠の中だけで暮らしていればそれでいいのかといえば、そんなことはないと杉原は思う。ボクサーだった父(山崎努)からボクシングを教わりながら、杉原はいつも考えている。
「俺は何者だ」「俺はエイリアンか?」
悩みながら高校生活を続けていく杉原は、同級生の加藤(村田充)のパーティで知り合った桜井(柴咲コウ)から話しかけられたのをきっかけに少しずつ親しくなります。
若く悩んでいる杉原は、いつも何かに向かって走っている。
何に向かって走ればいいかわからないけれど、絶えず走り続けている。
鋭い眼光でいつも走っている。
そこがこの映画の魅力だと思います。
どうでもいいことか? 大切なことか?
杉原と桜井の距離ははだんだん縮まるのですが、杉原は彼女に自分の出自のことを話すことができずにいます。日頃「自分は何者でもない」と思っているはずなのに、周囲の反応がわかっていたり、他人の態度を予想することが日常的なので、軽い気持ちで打ち明けることができません。
どうでもいいことに振り回されている周囲、そして自分自身。
ようやく彼女に打ち明けることができたのですが、それは彼女にとってベストなタイミングとは言えませんでした。一度は離れたように思えるふたりの関係は、最後に一応は決着します。映画的には終わるものの、その先はどうなるだろうと少し気になるところではあります。
これは2001年の映画、この後、文化や思考も変化しました。今の時代にはまず撮られることはない作品なのでしょう。
これは青春映画、恋愛映画ではない
冒頭で繰り返し「これは恋愛の物語」と告げていますが、個人的にはこれは恋愛の物語ではない、どこかへ行こうとしている、男の旅路を描いた物語。これぞ青春映画、そんなふうに感じました。桜井役の柴咲コウは正直、ヒロインというほど重要な立場にはいないかも。
杉原は大学への進学を決めたので、駅で男子高校生に絡まれているところを助けようとして命を落とした正一のように、きっとすぐに目的を定めて走り出すでしょう。
杉原にとって桜井との恋は、世界との繋がりの一部のように私には見え、それは深夜誰もいない橋のたもとで話しかけられた警官(萩原聖人)との関わりのように、杉原にとって一番最初に乗り越える必要がある外の世界という存在なのでしょう。近づいてみたら案外心寄せやすかったり、個人の目線は緩やかだったりすることもあるのかもしれません。
主演の窪塚洋介が最も輝いている時期に撮られた映画。初々しさと清々しさが映像に凝縮されていました。映像美の行定勲監督だから青春映画で勢いはあるのにごちゃごちゃしてないところもいい!
▼行定勲監督作品のレビューはこちらにもあります。
それではまた。
のじれいか でした。