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【映画・小説】名作『時をかける少女』を比較してみた【ネタバレ・感想】

【映画・小説】名作『時をかける少女』を比較してみた【ネタバレ・感想】

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こんにちは。 のじれいか(@noji_rei)です。 

筒井康隆の小説『時をかける少女』は1966年に発表された、青春SF作品です。

ドラマや映画で繰り返しリメイクされ、「時かけ」と親しまれているので、どれかを見たという方が多いのではないでしょうか。

個人的に感じた傾向は、初期の作品は不思議感が強めで、時代を追うごとに青春の覚束なさや葛藤へと物語の重点が変化しているような印象を受けます。


ここでは、私が知る限りではありますが、それぞれの作品の特徴、原作との違いをご紹介します。よろしければお付き合いください!

 

 

原作小説 時をかける少女

 原点はシンプルで読みやすい

 

筒井康隆によるジュブナイル小説(ジュニア小説で、今でいうと、ラノベみたいなもの)として発表されました。

不思議感が強めな完璧ストーリー

主人公の芳山和子は中学3年生。土曜日の放課後、クラスメイトの深町一夫朝倉吾朗と一緒に理科室を掃除します。ひとり理科室に残った和子は、実験室に怪しい人影を見て確かめようとしたところ、ラベンダーの匂いを嗅いで倒れてしまいます。

それから和子は、自分の意思とは関係なく時間移動(テレポーテーション)を繰り返す身の上になってしまいます。

自分がおかしくなったことを悩んだ和子は、不安でたまらなくなり、一夫と吾郎に打ち明けます。科学の先生にも。

やがて和子は土曜日の実験室にタイムリープしますが、そこに待っていたのは深町一夫。

深町一夫は、自分が2600年代から訪れた未来人で、和子より年下の薬学部の大学生、ケン・ソゴルという人間であること、時間跳躍の研究のために薬品をつくり試用したのはよかったが、戻る分の薬品を持ってくるのを忘れてしまったことを説明するのでした。

つまり一夫が実験室にいたのは、自分の時代に戻るための薬(クロッカス・ジルヴィス)を作っていたから。和子が比較的近い時間を行き来する能力を身につけたのも、その薬品の匂いを嗅いだからと教えられます。

困惑する和子に、一夫は恋心を打ち明けます。加えて長年一緒にいた友人と認識している一夫とは、実際は一ヶ月しか一緒にいなかったと知った和子は動揺します。

なぜかといえば、一夫が、和子たち周囲の人を集団催眠にかけたから。それによって自分のことを長年一緒に過ごした人だと思い込ませていたのでした。

和子は別れ際、記憶を消されることを嘆きますが、せめて自分だけは彼の記憶を失いたくないと。そこがなんとも切ない。今読んでも思わずぐっとくる完璧なストーリーです。

これぞすべての原点になった物語。ジュニア小説なので大変読みやすく、それでいて、少女の身に起こった、何かただならない雰囲気を味わうことができる名作です。

実写ドラマ タイムトラベラー(1972)

 秀逸な少年ドラマ


1972年6月から、全6回にわたりNHK「少年ドラマシリーズ」として放送されました。

冒頭にストーリー・テラーが登場して、物語に近いノンフィクションの不思議話が語られますが、そこが不気味さを誘う。「世にも奇妙な物語」のタモリに近いかも。オープニングの音楽も不気味です。

深町一夫(ケン・ソゴル)を演じているのは、木下清という俳優で、かなりの美形なのですが、その後の活動がわからないのは残念です。

芳山和子役の島田淳子は、その後の1970年代から80年代にかけて、女優として活躍しました。

少年向けにつくられたドラマとは思えないレベルの高さです。ストーリーも原作に一番近いですね。

ここでの和子が涙を流すのは、ケン・ソゴルとの別れは覚悟していて、唯一の望みは「互いの記憶を消さない」こと。

知識を得るのは素晴らしいことですが、知りすぎることで切なくなることもある。

そんなことも感じさせてくれるドラマでした。

DVDとしても発売されているので、気になる方はチェックしてはいかがでしょうか。

作品情報
脚本:石山透
出演:島田淳子、木下清、テレサ野田、城達也

実写映画版 時をかける少女(1983)

 恋愛と郷愁感溢れる世界観


舞台は尾道。大林信彦監督による「尾道三部作」で、当時の情緒ある風景がふんだんに登場する、歴史的価値が高いといわれる作品です。

舞台が尾道という特定の場所である以外では、映画としては比較的原作に近い設定です。特徴としては、尾道という古くからある街並と、そこに暮らす少女の、不安と恋心が入り混じった作品といった感じでしょうか。和子は中学なのに、最も憂いがあるのも特徴

冒頭、中3の和子たちはスキー場で、さりげなく未来から来た深町一夫が幼馴染として加わります。夜のスキーの風景が幻想的でした。

そこから物語は、問題の土曜日の放課後になります。理科の実験室で倒れた和子は、そこで嗅いだラベンダーの香りを忘れることはありませんでした。テレポーテーションができるようになった和子は、自分の力とラベンダーの香りが関係しているのではと疑うようになる。

テレポーテーションを繰り返す少女の不安と、和子の深町くんへの大人びた愛情が、少女らしい見た目と、成熟した精神力が反比例するように表現されているのが魅力的でした。

加えて原作との大きな違いは、未来に帰ろうとする深町に向かって、和子が「私もつれていって」と言うところ。この言葉を深町に言う和子は、たぶんこの作品だけです。

作品情報
監督:大林宣彦
出演:原田知世、高柳良一、尾美としのり、岸部一徳、根岸季衣

 

実写映画版 時をかける少女(1997)

 知的で大人びた時かけ


こちらは1983年に版の映画と同じく角川映画。こちらの作品も不思議感満載です。

監督も角川春樹が手がけています。現在と過去をカラーとモノクロに分けた、わかりやすい演出が特徴です。

大人になった和子は、15年前に大切な人との出会いと別れを経験しています。そしてその人を今でも待っているのに、それが誰なのか、どういう別れをしたのかを思い出せずにいました。 

そして和子は15年間の、昭和40年の女子高生時代に記憶を戻していきます。和子の運命の相手は、もちろん深町一夫ですが、ここでの一夫はイギリス帰りの転校生で、優秀ですがちょっと変わった存在です。


和子は有名建築家の娘、両親が倍賞美津子と伊武雅刀という濃い家族構成がなかなかキテました。

たまにナレーションが入りますが、それは初代の和子、原田知世だったりします。

主演の中本奈奈は、角川春樹事務所の芸能事務所に所属していました。
今は何をしているのだろうかと、少し調べてみたのですが、これといった活動情報を見つけることはできませんでした。

相手役の深町一夫くんを演じたのは中村俊介。

早見優が演じる英語教師の授業で取り上げる、エミリー・ディキンソンの詩も印象的。時間を管理できる未来人の移ろいが感じられました。

▼記事書いてますのでよろしければどうぞ。

noji-rei.hatenablog.com

 

作品情報
監督:角川春樹
出演:中本奈奈、中村俊介、野村宏伸、倍賞美津子、伊武雅刀、渡瀬恒彦、原田知世

 

アニメ映画版 時をかける少女(2006)

心に響くリアルな風景

 
細田守監督のアニメーション映画です。

舞台は東京、主人公は高校2年生で登場人物の名前も紺野真琴とまったく違います。ただ、真琴の叔母が芳山和子、タイムリープにも理解があるので、2010年版に近くその後をイメージさせているようです。

また、ほかの作品と大きく違うのは主人公の性格。繊細で憂いがある和子ではなく、
明るくて若干大雑把な性格です。


なのでタイムリープを繰り返すようになったことも不安に感じるどころか、逆にラッキーだと感じている。調子に乗って時間移動を繰り返しますが、実はタイムリープできる回数には制限があり、自分はそれを使い果たしてしまいそうなこと、また、自分や友人を守るためにタイムリープで現実を変えてしまうと、被害を被る人が出てくることを知ります。

原作でいう深町一夫役なのは、間宮千昭という人物でした。千昭は真琴に恋心を打ち明けましたが、真琴は最初、素直になれずいましたが、時間の大切さに気づき、自ら千昭に思いを打ち明ける。

ストーリーは明るくテンポよく進みます、風景が繊細でリアルとても美しい。……のですが、恋愛要素や不思議感は弱い気がしました。また大きな違いは、未来人が去るときに、現代人の記憶が消されないこと。

つまり真琴は千昭が去ってからも、それぞれの記憶に残っているということで、これは物語自体が違うくらいの展開だと思いました。

作品情報
監督:押田守
出演:仲里依紗、石井卓也、板倉光雄、原沙知絵

 

実写映画版 時をかける少女(2010)


 物語の続編・和子の娘が登場!


『時をかける少女』の続編的な映画です。主演の芳山あかりを仲里依紗、母親役の芳山和子を安田成美が演じています。

芳山あかりは、芳山和子の娘。そして薬学を仕事にする和子がいる大学にあかりも合格します。

そんなとき和子が交通事故で病院に運ばれる。あかりが駆けつけると、母は1972年に戻らなければと言い出します。

物語の続編としては、受け入れられないと感じる人もいそうですかね。(個人的には微妙でした)でも仲里依紗は女優として絶頂期、本当にかわいい。

仲里依紗はこの作品で中尾明慶と出会うことになる。運命の出会いになった作品は良作かなと考えるようにしています。なのでまあよい映画だったかな。

作品情報
監督:谷口正晃
出演:仲里依紗、中尾明慶、安田成美、石丸幹二

 


それではまた。のじれいか でした。