1976年、アイオワ州のとある町。
娼婦の母親のもとで、懸命に生きる14歳の長女とその妹たち。『早熟のアイオワ』は、本作監督のロリィ・ペティの自伝的映画です。
長女役を本作が初主演になるジェニファー・ローレンスが、三女役をクロエ・グレース・モレッツが演じています。
ストーリーと、よかったところ、残念に感じたところについて書きます。
早熟のアイオワ
※本記事の情報は2021年5月時点のものです。 最新の配信状況はサイトにてご確認ください。
作品情報
アメリカ 93分
監督:ロリィ・ペティ
キャスト:ジェニファー・ローレンス、クロエ・グレース・モレッツ
ストーリー
アイダホ州、カウンシルブラフスという町に、母のサラ(セルマ・ブレア)と、アグネス(ジェニファー・ローレンス)、ビー(ソフィア・ベアリー)、キャミー(クロエ・グレース・モレッツ)の三姉妹が暮らしている。
サラたち親子が住まいは不法滞在住居。夜な夜な賭博と売春を目当てに男たちが集まる劣悪な環境だ。
ビーは新聞配達と空き瓶拾いで小遣いを稼ぎ、幼いキャミーは近所の店で時間を潰している。
アグネスは成績優秀、将来を嘱望されるバスケットボール選手でもある。アグネスは方々でアルバイトをして家計を支えるが、母親のサラからは自分と同じく体を売るよう勧められるが、頑なに拒んでいた。
あるときアグネスは家に出入りする母の恋人のデュパル(ボキーム・ウッドバイン)に無理矢理犯されしまう。ショックで泣き崩れるアグネスの前に現れたサラは、娘を守る気など全くない。
アグネスはデュパルに銃を向けたことで、サラから家を出るように告げられる。
よかったところ・母親との訣別
この物語の母親サラは、アグネスたち姉妹の父親である前夫とは、DVが原因で離婚している。それもあって娘を不運の象徴のように捉えているのかもしれません。
サラは彼氏のデュパルから強要されて娼婦をしていますが、そんな暮らしが幸せなはずがなく、いつも酩酊している。自分の不幸に酔いしれ、娘のことまで考えが及んでいない様子です。もしくは最悪、投げやりになって娘が自分と同じように堕ちればいいと思っているのかもしれない。
ひどい母親なのですが、母と娘は、しばしばライバルになることがある。女のサガの怖さです。ここではサラがシングルマザーで不幸なことが原因のように見えますが、一見幸福そうな家庭でも娘を愛せない母親はいます。だからここまで不幸でなかったとしてもサラが娘を愛せたかは疑問です。
また、アグネスは、母親の彼氏に気を許しており、大人の目からすれば彼がアグネスに迫ってもおかしくない予兆は充分にあった。でもアグネスは13歳とか14歳の少女だから、肉体が成長しても精神が追いついてない。男女の性をどこまで理解できていたかは疑問です。本来は母親が守らなければいけないのでしょうが、ネグレストの母がアグネスを守るわけがありません。
よかったところ・女の子たちがかわいい
本作ではジェニファー・ローレンス演じるアグネスは、日本だと中学生の14歳の役柄を演じていますが実年齢は18歳くらいだったはず。あどけなさが残る表情からは、中学生とはいえなくても、高校生になりたてには見えるかな。若さと危うさを独特の存在感で演じていました。
5歳から芸術活動を開始したクロエ・グレース・モレッツは、本作の撮影では当時おそらく11歳くらいだったはず。天才子役といわれただけあり、子供ながら安定した演技力を見せています。
ほかにも女性キャストが登場するのですが、殺伐としていなくて透明感があり、かわいくてきれいなのがいい。
汚れ役といえる母親のサラを演じた、セルマ・ブレアは、『キューティ・ブロンド』『クリスティーナの好きなこと』などのラブコメ映画で活躍した女優。2018年に難病を患っていることをインスタで告白しています。
よかったところ・ガチにならない(ネタバレあり)
好みもあると思いますが、全体的にファンタジー要素が多い展開。シリアスすぎないので救われます。環境の悪さや親子関係もそこまでガチではないので、あまりつらさを感じずに観ることができます。
三姉妹を囲む大人たちも、想像よりはやさしく、最悪な母親と暮らしているのを「気の毒」と受け取っている。まったく救いがないわけではありません。
母に出ていけと言われ、バスケの試合に出場して次々にシュートを決めたアグネスは、颯爽と車に乗って妹たちをピックアップして走ってゆく…と、ラストもファンタジー。
実力があれば大人を頼らないで生きていける。そんな力強さを表現したかった気がします。
残念だったところ・姉妹が揃わない
三女のキャミーは近所のバーにいるので、アグネスやビーとは接触する場面がありません。
三姉妹なので濃密なやりとりがされることを期待していましたが、そこは期待薄でしたね。基本それぞれがそれぞれの時間を過ごしています。それも自宅が「ポーカー・ハウス」(原題:THE POKER HOUSE)といわれる不法住居だからなのですが、子供をあんな家に置いちゃダメという最低限の常識は備わっているようでした。
残念なところ・あっさりした展開
いい意味では見やすく、娼婦の母からネグレストで育てられた娘の話なので結構エグい展開をイメージしていましたが、そこまでではなかった。きれいであっさりめなのは、よかったと感じる一方、正直、物足りなさも感じました。
▼殺伐とした家族関係を描いた作品
それではまた。
のじれいか でした。