映画『サマータイムマシン・ブルース』
大学の「SF研究会」の部室に、なんとタイムマシンが!
若さとタイムスリップが繰り返されるコメディです。
わかりやすくて勢いがあり、邦画のSFとして、個人的に超絶おすすめしたい映画です。
ストーリーを解説しつつ、好きなところを書いてゆきます。
サマータイムマシン・ブルース
作品情報
製作年度 |
2005年 |
上映時間 |
107分 |
監督 |
本広克行 |
キャスト |
甲本拓馬(瑛太) 柴田春華(上野樹里) 新見優(与座嘉秋) 小泉俊介(川岡大次郎) 石松大悟(ムロツヨシ) 曽我淳(永野宗典) 田村明(本多力) 伊藤唯(真木よう子) 名画座支配人(三上市郎) 銭湯の番頭(楠見薫) 保積光太郎(佐々木蔵之介)
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タイムマシンでリモコンを取りに行く部員たち
2005年8月19日。
のどかな田舎の片隅にある大学のキャンパス。
グラウンドで、甲本拓篤(瑛太)、新見優(与座嘉秋)、小泉俊介(川岡大次郎)、石松大悟(ムロツヨシ)、曽我淳(永野宗典)はユニフォーム姿で、野球の試合をしている。
その風景を、カメラクラブの部員、柴田春華(上野樹里)と伊藤唯(真木よう子)が撮影している。
練習を終えて汗まみれの男たちは野球部ではなく、SF研究会の部員。伊藤に頼まれて撮影に応じていたのでした。
部員たちは汗まみれの体を洗うため銭湯に。和やかで楽しそうなのですが、冒頭からところどころ不穏な人影がちらつく。
翌日の8月20日。
うっかりミスでエアコンのリモコンにコーラをぶちまけて、リモコンが故障。
リモコンがないと操作できないエアコンのため、部員たちは困り果て、やがて暑さで不機嫌に。SF研の顧問で助手の保積(佐々木蔵之介)にリモコンの修理を頼むが、保積はリモコンを壊してしまう。
そんなとき、25年先の未来からSF研の後輩、田村明(本多力)がタイムマシンに乗って現れる。タイムマシンの存在に歓喜する部員たちは、過去に戻ってリモコンを取りに行くことを思いつくのだが……。
面白いのは、まず絶妙なテンポのよさ。すごく楽しそうなところが観ていて微笑ましいです。セリフや動きもよい。
町にある古い名画座には『バック・トゥ・ザ・フューチャー 』のポスター。リスペクトを感じます。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー 』の本編にも、選挙ポスターやその後に回収される伏線が散らばっていましたが、近い雰囲気も醸し出されている。
ただ『バック・トゥ・ザ・フューチャー 』は、主人公が両親を結婚させるという切実な問題を抱えていますが、こちらはエアコンのリモコンだから動機は単純。観ていてストレスがありません。
最初に19日に戻ったのは、新見優(与座嘉秋)、小泉俊介(川岡大次郎)、石松大悟(ムロツヨシ)の3人。
- リモコンをゲット
- ホワイトボードに「未来人参上」と落書き(小泉)
- 19日、銭湯で取られたヴィダルサスーンのシャンプーの犯人探し(新見)
など、やりたい放題です。
一方で、20日にいる甲本拓篤(瑛太)、曽我淳(永野宗典)、柴田春華(上野樹里)と伊藤唯(真木よう子)そして田村は、未来人がリモコンを取りに行ったなら、過去のリモコンは消えているはずだが、消えていない。その矛盾に気づきます。
SF研の顧問で相対性理論を研究する保積は、タイムマシンの存在を知りません。そして「過去から未来に行って何かを変えることで矛盾が生じる。違う時間軸が存在してすべては無になる。消えてなくなる」と言い切る。
保積の言葉に焦った甲本と曽我は、タイムマシンを使って、リモコンを取りに行ったまま戻らない、新見(与座嘉秋)、小泉(川岡大次郎)、石松(ムロツヨシ)を探しに19日戻る。
SF研の部員たちはSFに無関心。甲本は過去を変えてしまうと自分たちが消えてしまうと焦るが、ただ舞い上がる新見らは言うことを聞かず、甲本は翻弄させられます。
8つの疑問を振り返る
ほとんど一日を行ったり来たりする話なのですが、25年先から来た田村と、小泉らのイタズラで99年前に戻る曽我など、ちょいちょいおかしなことも起こります。
- 新見のヴィダルサスーンのシャンプーを取った犯人
- ホワイトボードの「未来人参上」
- 河童伝説の謎は?
- 石松のアンティーク好き
- 映画館の店員はSFファン?
- 25年先の未来から来た田村は、誰の子供?
- タイムマシンをつくったのは誰?
- 田村が25年先からリモコンを持ってくる
1. 新見のヴィダルサスーンのシャンプーを取った犯人
これはすぐにわかりますが、20日から来た新見自身でした。
2. ホワイトボードの「未来人参上」の落書き
20日の小泉が19日に戻ったときに書いたものですが、冒頭に試合を終えたSF研の部員たちが部室に戻った時点ですでにあります。そのとき不穏な雰囲気は、翌日の部員が前日の自分たちにバレないように隠れているから。
3. 河童伝説の謎は?
街で言い伝えられている伝説で、街のいたるところに河童が祀られているのですが、実はこれ、仲間に悪戯されてタイムマシンで99年前に行った曽我が作り出した伝説でした。
大学のキャンパスは、以前沼地で、そこに河童らしき男の子(曽我)が現れて村人たちに目撃されたのが伝説の始まり。
4.石松のアンティーク好き
石松はあちこちから古いものを拾ってくるのが好きで、今回は薬局の前に置いてある巨大なマスコット「ギンギン」を持ってきてしまいます。カラスみたいな黒いキャラクターでこれは最初、カエルだったらしいのですが、オリジナルに変更されたらしいです。
石松は過去に戻って、もう一つ持ってこようとするのですが、もうないからと引き止められます。
5. 映画館の店員はSFファン?
現在上映中の映画は、上田誠監督の『君はUFOを見たか?』。退屈でつまらない話なところがよいらしいです。次回作品は『バックトゥザフューチャー 』。
しかも暑いのに、下は短パンなのに、トップスは『スタートレック』。SF好きと言わないでなんと言えばよいのでしょうか。
6. 25年先の未来から来た田村は、誰の子供?
母親が同じ大学なこと、母親が以前使っていたカメラを使っているが、それは柴田のカメラと同じなことから、田村は柴田の息子だとである可能性が極めて高いことがわかります。
でも父親は田村という人。甲本は柴田に想いを寄せているので、姓を「田村」変えることを考えます。
7.タイムマシンをつくったのは誰?
何十年も相対性理論を研究していて、壁にぶち当たっていた万年助手の保積ですが、部室に置かれたタイムマシンを見て、つくれるかもとその気になり、タイムマシンを詳細にスケッチしています。
いつの世に発表されたかは明らかにされていませんが、タイムマシンは保積の手で作られたであろうことが予想できます。
8. 田村が25年先からリモコンを持ってくる
未来から過去なら問題はないだろうということで(本当か?)田村は自分のいる時代に戻り、来年エアコンが変わるため、使い切った状態でリモコンを持ってきます。
一件落着のはずですが、再び、リモコンはコーラまみれに。リモコンは再び故障してしまいます。
リモコンの行方・ネタバレあり
映画「サマータイムマシンブルース」
— ふーちゃん (@chacha58masyay1) April 13, 2018
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2度観たら、気がつくことも多く、2倍楽しめます😄👍💐 pic.twitter.com/SdqkouheVB
20日から19日に戻った甲本は、ほかのメンバーがタイムマシンで20日に戻ってしまい部室に残されてしまう。
部員たちがいるので外にも出られず、仕方なく一晩ロッカーに身を隠していたのでした。翌日、20日の部員たちと無事合流を果たして元いる自分のところに戻ります。
リモコンは99年前に戻った曽我が沼に置いてきたのを、99年後犬のケチャが、グラウンドから掘り起こして手元に。クーラーは復活。ミッションコンプリートです。
一日長く生きた甲本は、前日まで仲間と馬鹿話をしていたのに、もうあそこには戻れないなと感じてしまう。成長ですね。
それに甲本は、タイムマシンで時間を操ったようで、時間の枠に組み込まれていただけ、実は何もかも決まっていたのかもと考えてしまうのでした。また柴田のことが好きなので、未来の子供がつけている苗字「田村」に自分が変わるにはどうしたらいいのか。心を砕くことになりそうです。
そんなエンディングでした。
瑛太を始め俳優陣らは、もっともいい時期だったかもしれません。
今振り返るとそう感じてしまいますね。川岡大次郎も最近あまり見かけなくなりましたがドラマに出演しているしTwitterも更新されていました。
映画「19」(ナインティーン)
— 川岡大次郎 (@daijiro_kawaoka) January 9, 2020
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監督とのコメンタリーはあっという間でした。裏話満載。当時、僕が21歳。監督が23歳。その初々しさを、美しい映像でご覧下さい!https://t.co/K10X9HYPzU pic.twitter.com/gBLgEn2oq3
真木よう子もSNSで色々あったようで少し気の毒に感じていましたが、ドラマに復活していますね。楽しみです。
青春映画は、出演者のその後によっては、残念に感じることもありますが、上野樹里は素晴らしい。演技力も美しさ、透明感に磨きがかかり、本当にいい生き方をしている女優だと思います。
▼上野樹里といえば
それではまた。
のじれいか でした。