に映画『SOMEWHERE』は、ハリウッド俳優の淡々とした日常を描いた作品。
誰もが心に抱える、孤独と余白のようなものをテーマにした映画です。
ゆったりしたいときや、気持ちを落ち着けたいときにおすすめしたい映画でしょうか。
主人公はハリウッド俳優、舞台がホテルなどの設定から、同じくソフィア・コッポラ監督作品『ロストイントランスレーション(2003)』と比較される映画でもある。
主人公の俳優の娘役に、幼いエル・ファニングが出演していることでも話題になりました。
映画のストーリーと見どころをネタバレありでご紹介します!
SOMEWHERE(2010)
※本記事の情報は2021年6月時点のものです。 最新の配信状況はサイトにてご確認ください。
作品情報
アメリカ 98分
監督:ソフィア・コッポラ
キャスト:スティーヴン・ドーフ、エル・ファニング、クリス・ボンティアス、ララ・スロトーマン
予告
ストーリー
ハリウッド俳優のジョニー・マルコ(スティーヴン・ドーフ)はレイラ(ララ・スロトーマン)と離婚して独り身。
マルコはロサンゼルスの「シャトー・マーモントホテル」に暮らしながら、自堕落な日々を送る。
仕事もあり、多くの人に囲まれているけれど、マルコの心は満たされない。
ある日、マルコはレイラから、二人の間の娘・クレオ(エル・ファニング)を2週間ほど預かってほしいと電話口で言われる。妻の事情はわからないまま、マルコはクレアと一緒の時間を過ごすことに。
マルコとクレオは淡々とした日々を送り、 マルコが新作映画の公開でミラノに行くのにも同行する。
やがてクレオは以前から決まっていた、ベルモントへのキャンプへと向かい、送り出して戻ってきたマルコは、埋めようのない孤独感に駆られてしまう。
見どころ・オープニングがキテる
物語の冒頭で、マルコが運転するフェラーリが荒野をただ滑走する場面があります。
これが動物園のクマ状態(ストレスが溜まっているとやりがちな行動)のようで、同じ場所を円を描くようにぐるぐる回っているのですが、この時点ですでにマリオがどうしようもない感情を抱えているのが伝わってきました。
見どころ・ロスの風景とエル・ファニング
マルコが長期滞在している「シャトー・マーモントホテル」を中心にロサンゼルスの風景が印象的です。
また二人がミラノで滞在する「フォーシーズンズホテル」は室内にプールがある豪華さでした。
マルコとクレオが、ミラノのテレビ局主催の授賞式(らしきもの)に出演するのですが、いつもは子供らしい普段着のクレオが、淡いピンクのドレスに着替えた姿は目を見張る美しさ。
またフィギュアスケートを習っているクレオを、マルコがリンクに迎えに来る場面があって、そこでクレオは練習だけど本番用のドレスを着ている。普通考えにくところも、サービスカット的なものだろうと納得できます。やはり納得の美しさでした。
そんな感じで、この映画の撮影当時、まだ幼かった頃のエル・ファニングの魅力が満載されています。クレオは11歳の役ですが、エル・ファニング自身、同じくらいの年齢だったはずです。
見どころ・淡々とした日常に募る孤独
俳優のマルコは、仕事も順調で、離婚はしたけれど娘は美しく素直に育っている。もちろん女性にも不自由していません。
たまにパパラッチから追われているのを気にしますが、マルコの時間はごく淡々と過ぎていきます。
娘のクレオを預かってからも、イタリアのテレビに出演したり、プールで泳いだり、一緒のベッドでねむたりと、幸福そうに見える場面が続きます。
でも彼らの内面にある、いたたまれない感情や、不安と孤独を抱えていることが伝わってくるのが不思議でした。
誰かがそばにいてくれることで埋められる孤独もあれば、一人で立ち向かうことでしか解決できない孤独もある。(解決しないのかも)
マルコの空爆感がいつからか芽生えたのかはわかりませんが、マルコの孤独は自分でどうにかするしかない種類のもの。
受け入れるか、気づかない振りをするか、立ち向かうかは人ぞれぞれだと思います。
見どころ・孤独を自覚した主人公は?(ネタバレあり)
娘のクレオをキャンプに送り出して、一人になったマルコは自分が空っぽなことを自覚する。前妻レイアに電話をかけて「自分は空っぽだ」と涙を流しながら助けを求めます。
でもレイアはクレオを助けてはくれない。離婚したというのもあるし、やはり別れた妻には埋められない空洞だと気づいているのでしょう。
一人になって考えたクレオは、ホテルをチェックアウトする。
クレオが何処に向かうのかはわかりません。ただ孤独を埋めるために選んだホテル暮らしでは本当の空洞を埋めることはできないと気づいたのでしょう。そんな気がしました。
ロストイントランスレーションとの比較
『ロストイントランスレーション』の主人公はやはりハリウッド俳優でしたが、仕事で日本を訪れただけ。もちろんどちらにも心の闇はあったはずですが、『SOMEWHERE』では旅人ではないのに、ホテル暮らしを敢えて選択しているところが何気に大きく違う。
あと『ロストイントランスレーション』の「パークハイアット新宿」と比較すれば『SOMEWHERE』の舞台になった「シャトー・マーモントホテル」の方が温かみがあって、長期滞在には向いているのかもしれません。
それだけ主人公の孤独の深さを表現したかった。求めるものが強かったのではないか。そんなふうに思えてきます。
▼『ロスト・イン・トランスレーション』の記事はこちらです!
それではまた。
のじれいか でした。