松たか子といえば、今や押しも押されもせぬ大女優なわけですが、こんな彼女にも初めてのときはあったんですねー。
『四月物語』は、松たか子の初主演映画、岩井俊二監督による、爽やか青春ストーリーです。
輝ける松たか子が堪能できる短編映画、90年代の雰囲気に浸れるところもいい。
3つのおすすめポイントと残念なところ、ネタバレありでご紹介します!
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四月物語(1998)
※本記事の情報は2021年6月時点のものです。 最新の配信状況はサイトにてご確認ください。
作品情報
67分
監督:岩井俊二
キャスト:松たか子、田辺誠一、加藤和彦、光石研、江口洋介、松本幸四郎、藤間紀子、市川染五郎、松本紀保、津田寛治
予告
ストーリー
北海道、旭川で家族と暮らしていた楡野卯月(松たか子)は、家族に見送られながら東京へと旅立ちます。
卯月が東京の大学に入学したからなのですが、引越し先は殺風景な団地のような場所で、引っ越し屋が運んでくれた荷物が部屋に入りきらないアクシデントはあるものの、東京、武蔵野での新しい暮らしが始まります。
大学では同級生たちの自己紹介のときに、なぜか旭川出身を突っ込まれ、ちょっと変わった同級生から誘われたりと、誰もが経験していそうな初日が過ぎていきます。
初めての休日を迎えた卯月は名画座で映画を観るのですが、館内で挙動不審の男(光石研)が近寄っくるので思わず席を立つことも。男は卯月が忘れた本を届けにきていて、でも卯月はキモいのでひたすら逃げ続けます。
で、卯月はなぜか、ある一軒の書店が気になっていて、しきりに営業時間と定休日を店員に尋ねます。(理由は予想できる…)とにかくやたらと同じ書店に通います。
で、サークルは友人とフィッシングに入部して、部長(津田寛治)から教えを受けますが、そこまでガチでやる気があると言うわけではなさげです。
団地のお隣さん(藤井かほり)とは、はじめて東京で一人暮らしをする卯月は距離感がちょっとおかしい気がしますが、悪い人ではなさそうなので、まあいいか。
大学入学で上京し一人暮らしを始める女子のお話で、なんということのないストーリーではあるのですが、卯月がある本屋に通う理由が、その後明らかになっていきます。
見どころ1・リアル松本家、全員集合
オープニングで松本家が全員集合します。上京する卯月を見送りに来ているのですが、そこには、松本幸四郎、藤間紀子、市川染五郎、松本紀保が集合しているのがおかしい。
顔見知りの駅員から、娘さんが東京にいっちゃったら寂くなるねーと言われ、「恥ずかしいところ見られちゃったな」と答える松本幸四郎の表情は本当に父親のものでした。
見どころ2・松たか子の眩しいほどの輝き
とにかく松たか子が輝いています。
彼女がデビューした当時は、周囲のあまりの騒ぎ方に少し大袈裟なんじゃあと否定的な感情を持っていましたが、今見ると自分も若くこの輝きに気づかなかったんだなと、ちょっと情けなくなってしまいました。
彼女より美しい女性はほかにもいたかもしれませんが、これほどの輝きを持つ人を簡単には探せない、というかきっと無理でしょうね。松本幸四郎の娘ではなく女優としてエンターテイナーとして人前に立つ運命を背負って生まれた人なのだなと、今この映像を観ることで確信させられます。
撮影当時松たか子はおそらく二十歳くらいだったはずですが、高校生のブレザー姿の初々しさに胸熱、感動させられました。
見どころ3・懐かしい人が登場
短編映画なので、登場人物の多くは、卯月の日常を通り過ぎるかたちで登場します。雨の街で偶然、雨宿りをしていた卯月のビルから出てきたのが加藤和彦でした。
画廊で話を終えて傘を借りて出てきた加藤和彦は、建物の前でしゃがんでいる松たか子に傘を貸そうする、松たか子は何も断りながら、最後に加藤から傘を受け取り、先ほど言葉を交わした田辺誠一演じる、書店員、山崎の店に戻ります。
加藤和彦は他界されましたが、声が好きでラジオをよく聴いていたことを思い出します。懐かしい。
残念なところ・不自然な展開
お隣さんに一緒にカレーを食べませんかと誘う場面は果たして必要だったのか疑問です。旭川から出てきた卯月が東京の近所付き合いを知らない?的な話なのかもしれませんが、いくらなんでも不自然な気がしました。
一度断ったお隣さんは「やっぱり断ったら悪い気がして」と少しして自分から卯月を訪ねるのですが、その気持ちはわかるような気はしましたけど。
また卯月が映画館で観ているモノクロ映画は、劇中劇になっていますが、ちょっと伝わりにくかった気がします。
書店に通い詰める理由・ネタバレあり
だんだんわかってきますが、
卯月は高校生のとき、同じ高校の一年先輩、山崎(田辺誠一)に想いを寄せていました。でも二人はロクに言葉を交わしたことがないっぽい感じです。
好きで好きでたまらなかった山崎先輩は、東京の武蔵野大学に合格して上京してしまった。卯月は東京に行った友人から山崎が東京では書店でアルバイトをしている情報をつかみ、国木田独歩の「武蔵野」を読みつつ、山崎が住む武蔵野の地に思いを馳せます。
何度も書店を訪ねていたのはそのためで、卯月はやっと先輩の姿を認めますが、話しかけることができなかった…のですが、ようやく言葉を交わすことができ、山崎も卯月が高校の後輩だったことを認識します。
帰ろうとした矢先に雨が降ってきて、山崎は卯月に傘を貸そうとしますが、変な遠慮で借りずに行ってしまい、でもその後土砂降りになってしまい、見ず知らずの加藤和彦から傘を借りて、書店に引き返してやっぱり傘を借りる。一見無駄な行動ですが、そこで山崎と卯月の距離がほんの少し縮まります。
卯月は山崎から借りた傘をさして、今度は加藤和彦に借りた傘を返しに走ります。加藤に傘を返した卯月は、山崎から借りた傘をさして佇んでいる。
卯月が武蔵野大学に入学できたのは奇跡だと高校の担任からは言われたけれど、卯月的にはそれは愛の奇跡だと思っていて、その喜びを噛み締めているのだった。
そんなラストでした。
しかしまあ、こんな可愛い子を右往左往させる田辺誠一が憎いね。
それではまた。 のじれいか でした。