映画『さよなら歌舞伎町』は3組の男女が交錯する現代劇。染谷将太がカップルの一人を演じています。
染谷将太と前田敦子、ダブル主演となっていますが、これは染谷将太の映画ですね。
ストーリーをネタバレありでご紹介、好きだったところを書いていきます。
さよなら歌舞伎町
作品情報
2014年、135分
監督:廣木隆一
キャスト:
染谷将太、前田敦子、松重豊、南果歩、イ・ウンウ、ロイ
樋井明日香、我妻三輪子、忍成修吾、河井青葉、宮崎吐夢、田口トモロウ、村上淳、大森南朋
予告
物語
新宿、歌舞伎町に出入りする、年代も国籍も異なるカップル。どのカップルも一緒に暮らしているけれど訳あり。それぞれの理由で歌舞伎町を去ることになり、歌舞伎町での最後の一日が描かれます。
1 高橋徹(染谷将太)×飯島沙耶(前田敦子)
高橋徹は一流ホテル勤務と話しながら、実は歌舞伎町のラブホの雇われ店長。
職場のスタッフは使えない奴ばかり。徹は面倒を押し付けられ、妹がAV嬢になって客として訪れたりとゲンナリしている。「本当は一流ホテルのフロントマンになりたい」が口癖です。
飯島沙耶はプロデビューを目指すミュージシャン。グループで活動しているけど、沙耶だけデビューが決まりそうで、沙耶は後ろめたさを感じている。
2 池沢康夫(松重豊)×鈴木里美(南果歩)
池尻康夫は犯罪者で時効明けまで身を隠している。鈴木里美は徹が店長のラブホで働いて生活を支えてきたが、それも今日で終わり。
それは康夫の時効が明後日を迎えるからで、不自由な暮らしから解放されると一息ついているところ。
里美は時々、不穏な動きをしているので、店長の徹は里美が訳ありなことは薄々勘づいている。
3 ロイ(アン・チョイス)×イ・ヘナ(イ・ウンウ)
韓国人の二人は日本で知り合っている。
ヘナは日本に来て3年目。彼氏のロイにはホステスと話しているが本当はデリヘル嬢。ヘナは今日限り仕事をやめて帰国するので、一緒に帰ろうとロイを促している。
ロイは日本に来て5年になるが、お金が目標額に届かずまだ帰国できないと、ヘナの誘いを受け入れることができずにいる。
それぞれの事情(ネタバレあり)
6人を中心にあらゆる人物が交錯する群像劇ですが、関係性の持たせかたが巧みで、それぞれの事情が明らかになっていくプロセスが面白い。
それぞれの事情をネタバレありで触れていきます。
徹と沙耶の事情
徹の実家は水産加工の仕事をしていたが震災で仕事を失ってしまう。徹が沙耶からホテルの専門学校の学費140万円を借りたのはそのため。
結果的に徹は沙耶に、一流ホテルのフロントマンで働いていると偽る。だけど自分でもそうだったらどんなによいだろうと思っているので、ストレスは余計に溜まっていきます。
「こんなところにいたくない、ここは場繋ぎだ」と徹はあらゆる人に説明します。
徹の妹がAVの撮影で訪れ、兄妹それぞれの秘密がバレるのですが、妹は専門学校の授業料を捻出するため出演に至った事情も見えてきます。
沙耶のプロデビューが決まりそうなのは、音楽業界の竹中(大森南朋)への枕営業もあって。徹のホテルに客として訪れた沙耶は、徹と顔を合わせてしまう。
これまでの嘘が簡単にバレて、当然のごとく口論に。沙耶は徹を許しても、徹は沙耶を許すことができません。
池尻康夫・鈴木里美の事情
ラブホのスタッフの鈴木里美は、今日で仕事をやめるので勤務の最終日。
康夫は強盗事件の犯人として指名手配中で、家から出ずに身を隠している。里美は康夫が押し入った先の妻で、康夫と一緒に姿を消しているため、二人の仲は刑事に疑われています。
長年の我慢がやっと報われるというとき、ホテルの客として訪れた不倫カップルの刑事に里美の顔がバレしてしまいます。
里美が家にいた康夫に連絡を入れて、夜の街を自転車で逃走するのは、なかなか爽快な場面です。
ロイとヘナの事情
ヘナはホステスだとロイに嘘をついていたが、ロイは名刺でヘナがデリヘルで働いていることがわかってしまう。
何も知らないヘナは、仕事が最終日なこともあり、客にもやさしく、同僚たちやデリヘル店長(田口トモロウ)たちとの別れを惜しむ。また自分一人で帰国してしまえば、ロイとの関係は終わってしまうかもと感情が昂る。
歌舞伎町の飲食店で働くロイにもホステスのパトロンがいるのですが、ヘナの帰国が迫り、ロイの頭にはほかの女性が入る余裕はない。
そしてロイは、ヘナの最後の客になろうと決め、すべてを打ち明けます。
よかったところ・まとまり感がすごい(ネタバレあり)
3組以外にも変わったカップルが登場します。
警察官の理香子(河井青葉)と、竜平(宮崎吐夢)の不倫カップルも笑えます。顔を覚えるのが得意な理香子は、ホテルの従業員の里美が強盗犯の共犯と気づく。時効を迎えてしまうので早く逮捕したいけれど、場所が場所なだけに簡単ではありません。
また家出女子高生の雛子(我妻三輪子)とスカウトの正也(我妻修吾)の不思議カップルは雰囲気づくりに役立っていました。
正也は雛子をカモにするのが目的でしたが、言葉を交わすうち雛子に同情、やがて惹かれてしまい、足を洗って雛子を迎えに行く……とちょっと純粋すぎる展開なのですが、物語全体をほんわかさせる役割があります。
基本的に根っからの悪人は出てきません。ホテルのスタッフもだらしないけれど悪どさはないし、ヘナが働くデリヘル『ジューシーフルーツ』の店長、久保田(田口トモロウ)にしても、昔は悪かったらしいけど現在は落ち着いたよき大人です。
染谷将太の演じる徹は、最終的には歌舞伎町からも、恋人の沙耶と暮らす部屋からも離れる。悲しいけれど、これもまたハッピーエンドなのでしょう。
別れは予感があることが多いものですが、ときに突然訪れることもある。相手を許せるのも愛だけとは限らない。そのとき置かれた環境や心理状態も影響するものだなと、しみじみじさせられるお話でした。
▼染谷将太出演映画はkちらにもあります!
それではまた。
のじれいか でした。