アカデミー賞、作品賞、主演女優賞、監督賞を受賞した2020年の話題作『ノマドランド』。
長年暮らした街と家を、企業倒産によって追われた主人公の60代女性は、古いキャンピングカーで仕事を求めてアメリカを放浪することになった。
いわゆるロードムービーなのですが、これは旅ではない。アメリカの広漠とした大地を宛てもなく走る話です。
どうなんだろう…
若い世代の人が観たら「ふーん」くらいにしか感じないのかもしれませんが、世代や境遇によっては少なからず感じるところがある話だと思いました。
映画の見どころと感想をネタバレありでご紹介します。
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ノマドランド
※本記事の情報は2021年6月時点のものです。 最新の配信状況はサイトにてご確認ください。
作品情報
アメリカ 108分
監督:クロエ・ジャオ
キャスト:フランシス・マクドーマンド、デヴィッド・ストラザーン
予告
ストーリー
2011年、リーマンショックの影響を受け、アメリカ・ネバダ州を拠点とした巨大企業が倒産する。ファーン(フランシス・マクドーマンド)は、夫亡き後も企業城下町「エンパイア」で臨時教員をしていたが、街が閉鎖されて社宅を追わることになる。
最低限の思い出の品だけを手に、ファーンはキャンピングカーでアメリカ中を仕事を求めて彷徨う。いわゆる「ノマドライフ」を送ることに。
ファーンはAmazonの梱包作業といった季節労働を渡り歩き、同じようなノマドたちと触れ合い、交流する。
ノマドの生活は自由そのもので気軽だが、大変過酷でもある。仕事もタイミングよく見つかるとは限らず、車の故障や病気といった心配もついてまわる。
それでもファーンは「ホームレス」ではなく「ハウスレス」。「家は心の中に」を心情に、帰る場所のない旅を続けるのだった。
起こり得ることで心配になる
率直に言えば感動作というのとは違うのでしょうが、 こうなる可能性は誰にでもある気がしました。
日本不正規労働者が増え続け(ま、私も不正期労働者ですが)仕事と住むところを持たないネットカフェ難民が問題になっていますが、それのアメリカ版(withキャンピングカー)であり、高齢者版というのが、この『ノマドランド』です。
あと誤解なきよう敢えて言っておくと、この『ノマドランド』の主人公、フェーンの職業は、非常勤ですが教師。自立した考えを持つ知的な人です。
トラブルどころか、行く先々、出会う人から好かれています。
これが本人の資質の問題で片付けられないところが切ない。そして余計に、運命によっては誰にでも起こり得る、という危機感を抱かされます。
プライドのある女性の生き方と本音(ネタバレあり)
フェーンは賢くて行動力があり自然体で生きる女性。自分を持っている分、他人との線引きが上手で必要以上に立ち入らないので人から好かれます。
フェーンの妹は、姉のノマド暮らしを心配し、自分の家で一緒に住まないかと誘いますし、道中で知り合ったノマド仲間のデイブ(デヴィッド・ストラーザーン)は、息子から家に帰ってこいと言われたときフェーンに一緒に来ないかと声をかけます。
妹の申し出は即座に断りますが、デイブの自宅を訪ねたとき「ここに住まないか」と改めて誘われたフェーンの心は少し揺れます。デイブの家は裕福そうでゲストハウスがある。で、そこにいればいいと誘ってくれるのですが、考えた末、フェーンはデイブの家を出ます。
甘えたくなかったのも理由だと思いますが、フェーンは若い頃から「楽しいことは外にある」そういう考えの人だった。結婚後は田舎町のエンパイアに暮らし、夫が亡くなっても留まり続けたのですが、それは夫への愛、それしかない。
途中で「もう少し早くエンパイアを出ればよかった」とフェーン自身、後悔しているようではある。
でも彼の思い出に包まれて暮らしたかったんだなと思うと、観ている方は納得できる理由ではありますね。その一方、ノスタルジックもほどほどにって気持ちにもさせられます。
生きるためには「家は心の中に」より「愛は心の中に」が賢明なのかも。
これから何が起こるかわからない、何が起きても不思議ではない。そんな世の中で生きていくためには感情の切り替えが必要なんだろーなー。
▼苦しみながら切り替えた愛のお話はこちらです!
それではまた。 のじれいか でした。