映画『風の慕情』は、1970年に公開された吉永小百合主演の映画です。
オーストラリア、シドニーを舞台に、顔を知らない姉を探す……といったお話です。
橋田壽賀子脚本の本作。正直ツッコミどころは満載だったのですが、生きることは? 女の幸せとは? といった人生の本質に触れる映画ではありました。
【映画】『風の慕情』橋田壽賀子・吉永小百合のラブサスペンス【オーストラリア】
作品情報
1970年 94分
監督:中村登
脚本 :橋田壽賀子
キャスト:
吉永小百合
石坂浩二
尾崎奈々
森次浩司
入川保則
香川美子
渚まゆみ
プロポーズの返事に迷う女、姉の元へ
吉永小百合演じる長谷由布子(吉永小百合)は、彼氏(入川保則)から、冒頭でいきなり「結婚しよう」とプロポーズされる。由布子は嬉しくないわけではないが、物足りなさからこれでいいのかと迷いが生じてしまう。
両親のいない由布子の唯一の身内は、オーストラリアに住んでいて顔を知らない姉のゆきだけ。姉はオーストラリアで結婚して幸せな結婚をしているはずだから
「お姉ちゃんに会って相談しよう!」
と由布子はいきなりオーストラリアに旅立ちます。
オーストラリアの空港に着いてみれば、迎えに来てくれていると思っていた姉の姿はない。そこに留学生の西条直紀(石坂浩二)が現れて、通りすがりの親切な日本人として世話を焼き、姉探しに付き合ってくれる……そんな話です。
由布子は、オーストラリアに向かう飛行機内で知り合った商社マンの郷田(森次浩司)から「彼とは会わない方がいい」と直紀は危険とアドバイスされ、実際、直紀は現地の怪しい男たちと接触しており危険な香りもしないではない。でもそんな男だからこそ、逆に惹かれてしまうのが、女心という奴なのでしょう。
気づけば由布子の旅は「結婚の相談」から、「姉探しの旅」「恋の旅」へと。
直紀は由布子の姉を知っていますが、本当のことを話せない深い事情があるようで、由布子をやたらと観光に連れ出すものの、姉との接点を持たせることを避けようとします。
姉の存在を知る直紀
やがて由布子は直紀への思いを自覚する。でも彼の気持ちは自分にはないと帰国を考えた由布子でしたが、直紀からも好意を伝えられ、もう少しだけオーストラリアに留まろうと思う。
そんな由布子の前に姉らしき女性(香川美子)が現れる。彼女は直紀とたびたび接触していて、由布子の姉なのは間違いない様子。でも彼女は自分が姉と由布子に名乗ろうとしないし、由布子も彼女が姉のゆきと疑ってはいない。
由布子と姉らしき女性はホテルのティールームでお茶をする。由布子は、姉を探しにオーストラリアに来たこと、姉とは会っていないが、オーストラリアの景色を見るうちに姉もこの風景を見たのだなと感慨深い気持ちになると女性に話す。
女性は「お願いを聞いてくださらない?」と、由布子にダイアモンドのリングを差し出して、よければ受け取って貰えないかと手渡します。
こんなリングです。センターストーンはスクエアカット。かなり大ぶりなダイヤモンドリングでした。
由布子は相当鈍い女性ですが、形見のようにリングを渡され、さすがになぜ私に?と目の前の女性が姉ではと悟る。でもほんの少し目を離した隙に、女性は姿を消してしまう。
直紀は彼女が行ったはずだと、由布子を伴いフィリピンへと向います。
フィリピンで待っていたのは?
直紀は姉を詳しく知っているらしいのに、妹の由布子に姉のことを打ち明けなかった。なぜなら姉のゆきには秘密があったから。
5歳のときにフィリピンで両親とはぐれたゆきは、孤独と闘いながら壮絶な人生を生きてきた。現在はオーストラリアのマフィアの情婦になり、身内を命を危険に晒すことになると(実際に由布子は狙われた)、呑気に遊びにきた妹を受け入れている場合ではなかった。
姉ゆきは香川美子なので、上品で美しい女性なのですが、両親とはぐれた時点で自分は死んだのだと直紀に語っていて、生きることに絶望している。
それは由布子との手紙の遣り取りでは感じさせなかった、姉ゆきの本当の姿。日本語の読み書きも不自由なので手紙を代筆していたのは直紀。戦争を知らず日本の両親の元で育った由布子には想像もつかない現実でした。
姉は唯一、両親のぬくもりを感じられる場所フィリピンで命を絶つ。直紀は姉が死を決意してフィリピンに向かったことに気づきながら止めることはできませんでした。
考えさせられるラスト・結婚の悩みは贅沢
姉が抱えていた現実、漸く会えた姉が自らの命を絶ってしまうなど、由布子にとっては衝撃的な結果が待っていたオーストラリア経由フィリピンの旅ですが、ストーリーが展開するにつれ、脇に置かれた感のある由布子の結婚はどうなるのか考えていました。
<由布子の選択肢>
① 直紀との愛を貫き、日本で待つ彼とは別れる
② 直紀と別れるが、彼とも別れる
③ 直紀と別れて彼と結婚
ぼんやりとですが、②を考えていました。
直紀はシドニー大学に留学している医学生。日本に戻ればそれなりの立場が約束されている。なので由布子と出会い、帰国を決めてもおかしくない。ただし以前、直紀とゆきは恋人に近い関係だった。けれどその感情は、ゆきへの同情に近い気持ちだったと直紀は由布子に打ち明けている。
しかし由布子は何の躊躇いもなく日本で待つ恋人との結婚(③)を選びます。最近のドラマだとあまりない選択じゃないですかね。直紀は言います。戦争に翻弄されたゆきと比較すればきみの悩みは贅沢だ、だから彼と結婚しなさいと。
直紀の言葉に由布子も、何でもない愛こそが、女にとってかけがえのないものであるかがわかったと納得します。
1970年なので戦後というには時が経過しているようですが、まだまだ戦争の爪痕は残っていた。幸せは比較するものではないけれど、日常に幸せを感じて受け入れていく大切さもあると、橋田壽賀子は訴えたかったのでしょうか。
ツッコミどころは多かった・気になった点
ストーリーのツッコミどころは多いです。
日本で結婚に悩んだ由布子は、姉に「会いに行きます」と手紙を送り、きっと読んでいてくれるはずと、返事も待たずに渡豪しまたことがわかります。しかも姉宅に泊まること前提でホテルも押さえていない、おまけに所持金もあまりないらしいのがすごい。すごすぎる。
だいたい由布子が写真もない手紙の相手を自分の姉と確信できるのか、説明が曖昧でよくわかりません。
姉のゆきが20歳になったころ、日本の新聞の尋ね人欄で、フィリピンで保護された後にオーストラリア人の養女になっていたことが判明するらしいのですが、どうして一度も会わない相手が姉とわかるのか説明を聞いてもわかりません。
直紀も由布子の話を聞いて、なぜそれが姉とわかるんですか?と言ってしまい由布子を怒らせます。
でもこの話を見た多くの人は「どうしてわかるの?」と疑問形のはず。
ほかにもフィリピンに行ったばかりの直紀の元に、姉らしき人物の遺体がみつかった連絡がなぜ入るのか? といったよくわからない点がありました。
由布子の能天気にも思える鈍感さは、同じ親から生まれながら、日本でのんびり育った女と、異国で苦労した女の明暗を性格に表しているのかなと考えてみたり。
関係ないのですが、若いときの石坂浩二って男前ですね。錦戸亮に似てる。
石坂浩二! pic.twitter.com/TnclFkEHZN
— noji_rei (@noji_rei) April 6, 2021
それとCA役の尾崎奈々がかわいかったなー。必見です。
▼吉永小百合の出演する映画はこちらにも
さいごに
橋田壽賀子脚本の『風の慕情』。古い映画なのですが、現代にも通じるところがあるかもと考えさせられる映画でした。
吉永小百合のファッションがかわいい。19070年代のおしゃれOL女子が楽しめますよ。
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※本記事の情報は2021年4月時点のものです。
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それではまた。
のじれいか でした。