こんにちは。 のじれいか(@noji_rei)です。
映画『アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド』(Ich bin dein Mensch)は、孤独な独女が自分の欲望を満たしてくれるアンドロイドと暮らすというSFファンタジー。
自分を満たしてくれる唯一の存在がアンドロイドという切なさ。
コメディ要素もあるけれど、考えさせられるところも。アラフォー以上の人には共感できるところがありそう!
ストーリーについて、感想をネタバレありで書きます。
よろしければ、お付き合いください!
【映画】『アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド』
作品情報
監督:マリア・シュラーダー
原作:エマ・ブラスラフスキー
2021年 105分 ドイツ
<キャスト>
・アルマ(アレン・エッゲルト)
・トム(ダン・スティーヴンス)
・テラレカ社の営業(ザンドラ・ヒュラー)
ストーリー
博物館の考古学社であるアルマは、研究資金を得るため、企業の極秘実験に参加する。
その実験は、独身向けに開発された、伴侶用のロボットと暮らすというもの。
アルマの前に現れた、ロボットのトムは、完璧な容姿の青年で頭脳明晰でパートナーとしては完璧。
全女性の恋愛や意識のデータに加えて、アルマの好みと意識に応じるよう、完璧にプログラミングされているため。
最初アルマは、ロボットと暮らすことに抵抗を感じ、トムに心を開くことはない。だがやがて、少しずつだが、アルマの中でトムの存在が大きくなっていく。
二人はリラックスした時間を送れるようになるのだが、アルマは自分の気持ちの変化に恐れと虚しさを感じるようになる……。
好きなところ
一人暮らしの人には沁みる(ネタバレあり)
アルマという女性は40代で独身。パートナーがいた時期もありましたが、今は独身で、子供はいません。
なのでアルマの日常は、博物館での研究と、郊外で暮らす父親の介護がほとんどです。
仕事には恵まれているけれど、寂しさだってあるし、先々への不安もあるはず。
そんなアルマは、3週間という期間限定で、伴侶ロボットを試すことになりますが、最初の目的は研究資金欲しさ。そのためトムとはぎこちなく接することしかできない。
だけどイケメンロボットのトムは、アルゴリズムを搭載しており、頭脳明晰で家事能力だって高く、しかもイケメン。そして何よりアルマの望む行動をするように設定されているため、プログラミングだとわかりながらも、アルマは心を許すようになる。
やがてアルマとトムは、心を通わせるようになり一線も超えますが、そこでやはりアルマはわかりきっていたことを改めて実感して愕然とします。
それは、どれだけ深く関わってもトムはアルマ自身でしかなく、二人の人間はそこに存在していないこと。
つまりアルマは一人でいるのと同じということでした。
ロボット主演でないところがよい
ロボット(と、ここでは書きましたが、アンドロイドとかAIとか、そういう類)を取り上げたSF作品は無数にあります。この作品が面白いのは、主人公はあくまでアルマで、トムはアルマの心の投影であるということ。
人間に寄り添うことが目的のロボットを前に人間の戸惑いや、受け入れることで生じる、人生の虚しさや切なさがテーマになっているところです。
間違ってもロボットが氾濫を起こすことはないので、そっち系の物語を期待する場合は不向きですね。
個人的には便利さの先にある、人の心の葛藤がメインのストーリーの方が、これぞSF作品だと感じるのですが、どんなものでしょうか。
トム役のダン・スティーヴンスがかっこよき(ネタバレあり)
女性の欲求を満たすために製造されたロボットのトムは、堅物で神経質なアルマの要求にも見事に応じます。ただ、好みに近すぎる(望んだことが再現される)ため、逆にアルマをイラつかせてしまい、衝突も起こります。
そんな完璧なロボットのトムを演じているのは、イギリスの俳優、ダン・スティーヴンス。『美女と野獣』『ダウントンアビー』などでお馴染みですが、やっぱりかっこいい。
ロボット役の演技が見事。本当にロボットに見えてきます。
残念だったところ
ラストの解釈に悩む(ネタバレあり)
実験期間を終え、アルマはトムと暮らすことに限界を感じて、返却してしまう。情が移っているだけに痛みの伴う別れでした。
そして企業への報告書には、伴侶ロボットは想像以上にすばらしく、孤独を取り除いてくれる存在ではあるが、あまりに簡単に欲望が満たされ、人間同士の交流が不要になるという危機感から、反対であるという意見を述べます。
けれどそう答えながら、アルマ自身は、トムに自分の片割れのような愛情を感じるようになり、行方のわからないトムを探します。
きっとそのまま一緒にいるんじゃないかな。そんなふうに思えるラストなのですが、わかるようでいてちょっと不可解でした。
▼ちょっと変わった物語はこちらにもあります。
それではまた。のじれいか でした。