映画『俺はまた本気出してないだけ』は青野春秋による人気漫画の実写映画化です。
「後悔したくない、自分の人生をみつけたい」尾崎豊15歳の言葉を胸に、42歳バツイチ男が、突然漫画家になろうと思いつく。そんな中年男の自分探しを馬鹿馬鹿しく描いたコメディです。
主演を堤真一、その娘を橋本愛、父を石橋蓮司が。バイト先の同僚には山田孝之と豪華キャストがダメ男を支えます。
『俺はまだ本気出してないだけ』の面白いところ、残念に感じたところを、ネタバレありで書いていきます。
俺はまだ本気出してないだけ
作品情報
製作年度 |
2013年 |
上映時間 |
105分 |
監督 |
福田雄一 |
キャスト |
大黒シズオ(堤真一) 大黒静子(橋本愛) 宮田修(生瀬勝久) 市野沢秀一(山田孝之) 村上政樹(濱田岳) 宇波綾(指原莉乃) 宮田の妻(水野美紀) |
予告
緩い日々、砂時計の砂は確実に落ちてゆく
自分探しをするため会社をやめた42歳のバツイチ男、大黒シズオ(堤真一)は、父(石橋蓮司)娘(橋本愛)から冷たい視線を送られながら、ゲーム三昧の日々を過ごす。
あるとき本屋で立ち読みした漫画に感化され、漫画家になろうと思い立つシズオだが、描いた漫画を出版社に持ち込んでも当然ボツ続き、バイトを始めるが年下の店長からは叱られ、若いバイト仲間からはおちょくられる。
大人になりきれないおじさんのシズオは単純で裏表がないのがいいところ。でも、とても大らかに構えているけれど、本当は色々不安でたまらないのです。
不安で先のことが考えられないほど本当は不安でいっぱい。
父からも「一体何歳まで生きるつもりなんだ」と大変イタいことを言われ、人から馬鹿にされるたび「本気を出す」と誓うものの、結果、息抜きばかりしています。
自分の人生は既に「将来」の域に入っている、それなのに妄想にすがっていられるのは、時間は急に過ぎなくて、一日に24時間なことを知っているから。急に年を取るわけではないことを経験で知っているからです。
若くて要領はいいけど無口で愛想のない、新入りバイトの市野沢秀一(山田孝之)は、シズオがバイトするファストフードをすぐ辞めてキャバクラの黒服に。新人のおじさん(村松利史)が若い黒服に虐められるの見ていられなくて、すぐ手が出てしまうコミュ力の低い男です。
シズオの同級生で、現在は会社員の宮田(生瀬勝久)は、いい人だけど、いい人すぎて妻から離婚を告げられた哀れな男。たまに子供と面会しても、お互い遠慮ぎみです。
シズオの周りはみんないい人たちだけど、ちょっと残念な人たち。そしてシズオは世によくいる現実逃避の男。
何かを成し遂げたいのに焦るだけで行動が伴わない。同じ立場の人が見たら超絶焦りを感じる、全く持ってイタい話(共感度高め)です。
シズオは漫画家デビューできるのか?・ネタバレ
繰り返し雑誌社に原稿を持ち込みをしては、編集者の村上(濱田岳)からマイルドな口調で原稿をボツにされていたシズオですが、あるとき自分自身をネタにした漫画が評価されて雑誌で佳作に選ばれます。
次回作品は大賞受賞が期待できる、デビューできるのではという村上の言葉に、すっかりプロになった気分のシズオ。しかし村上が急に出版社を退職して担当が変わる。そして応募作品はボツになってしまう。頂点からの急落下です。
ちなみにシズオがボツにされた漫画は「寿命が300年あると思い込んで生きよう」という切り口の話。幼稚な人は時間の感覚が鈍いものですが、そんなところもよく出ています。
誰だって人生の残り時間を考えると焦りだしてしまうけれど、だからといって、狼狽えて保身に走ったところで安心できるわけでもない。結局、焦りの原因は今が満たされていないということ。
娘が橋本愛の時点で勝利している!
佳作に選ばれ、調子にのって本気を出した原稿がボツにされ、シズオは佳作が自分の頂点だったと悟ります。
でもそんなとき、橋本愛演じる娘の静子との交流で、シズオは自分が身勝手だったことに気づかされる。娘や父の愛を再確認したシズオは「本気を出そう」と改めて誓うのでした。
またシズオの友達の宮田も、シズオの影響を受けて、以前からやりたかったパン屋を、秀一や、別れた妻(水野美紀)と一緒に始める。全員が丸くおさまった結末でした。
シズオの周囲の人たちは、実は愛されていて殺伐としていない。そこがなんといっても救われるところです。日常には感謝が必要だなと実感させられました。ただ、娘が橋本愛なら、それだけで人生の達成度が高まりそうですけどね。
何かを成し遂げるには、どうしたって人からの評価が必要。でも本気を出したことろで注目されるとは限らない。
シズオの漫画は村上からは評価された。でも担当が変われば評価も変わる。実際にそういうことは多いと思います。でもだからといって「本気を出さない」で認められるはずがない。漫画だけではなく表現を職業にするのは本当に難しい。
さいごに、主役の子持ち中年ニート役を演じた堤真一ですが、鍛え上げられたガタイがニートらしさ薄。もっとぽにょぽにょしていて欲しかった。
▼スピード感のあるコメディ映画はこちらにも。
それではまた。
のじれいか でした。