映画『羊とオオカミの恋と殺人』は、ホラーっぽくもある、ちょっとブラックなラブコメ。
生きることに絶望した浪人生と、アパートの隣人のかわいい女子との恋の物語です。
ラブコメなのですが、ちょっと変わっていてシュールで意外な面も。あり得ないからこそ面白くて、軽い気持ちで楽しめる作品でした。
普通の恋愛映画では物足りないなーと、感じている人におすすめしたいちょっと捻りのある映画。
映画の好きなところ、残念に感じたところをネタバレありで、ご紹介します!
羊とオオカミの恋と殺人(2019)
作品情報
103分
監督:朝倉加葉子
キャスト:
杉浦遥亮、福原遥、江野沢愛美、江口のりこ
予告
物語冒頭の展開がいい・好きなところ
物語の冒頭。
黒須越郎(杉浦遥亮)は、壁のフックで首吊り自殺をしようとする。だがフックが壊れて死に切れない。
フックが壊れた拍子、壁に小さな穴が空き、隣室が覗けるようになる。
隣に住んでいるのは、若い女性。黒須は彼女の美しさに呆然として見入ってしまう。
黒須は大学受験に失敗し予備校もクビになって死のうとしていた。バイトもしていないので電気も止められている。お先真っ暗なのですが、突然空いた壁の穴の向こうの隣人に恋をして思いとどまります。
冒頭の展開がすごくいい。絶望した黒須の真っ暗な部屋から、日常を過ごしている美女の生活が流れ込んでくる感じがいい。
それに黒須は真面目な男子なので、彼女を覗き見ていますが、変なもの(?)は見ていません。エロ要素はなしでさわやかな雰囲気なのもいい。
いきなりご飯に呼ばれ・好きなところ
この映画は会話が秀逸です。
穴から覗いていた隣人の美女を覗いていた黒須は、まさかの本人から話しかけられる。彼女の名前は宮市莉央(福原遥)。
宮市は、なんとイキナリ「ご飯食べるぅ?(すごくかわいく)」と黒須を誘う。それから二人は毎日一緒にご飯を食べる仲になります。
宮市は嬉しいけれど不安もある。それに「どうして僕なんかと」と思っている。
だから黒須は宮市に言います。「僕は予備校もやめて何もしていないんです」
「私と一緒にご飯食べてるじゃない」
「宮市さんも、いつかは、この人いつまでウチでご飯食べてるんだろうって思うじゃないですか、そしたらこの関係だってある日、突然終わるじゃないですか」
「でも切れるほど繋がれたら、よくない?」
この会話は深い。
この時点で二人は恋愛の話はしていない。黒須はこの時点で宮市を好きなのですが、もう少しコミュニケーションについて話しているところが好きでした。
誰かとご飯を食べる意味は?・好きなところ
ある日、宮市が黒須に言います。
自分が異常なのではと思うことがある、人を通じて自分が普通だと確かめたくなることがある。大勢でいるときは自分が自分でいたいと思うが、一人のときは自分が正常かを確かめたくなる。
そのあたりの言葉もよかった。
ただ、宮市が黒須にそんな話をするのは、別の意味がありました。それを宮市は壁の穴から見ているので薄々気づいていたのですが、なんと美女は殺人鬼。
カッターで頸動脈を華麗に切断し、人を殺めていたのでした。
殺人鬼の美女と死にそうな男のゆくえ(ネタバレあり)
宮市が透明のレインコートを着込んで、カッターで頸動脈を切断する姿を見ていた黒須でしたが、黒須は宮市に黙っている。でもある日、隣室でカッターをふるう宮市を見ていたのがバレてしまう。
自分がやられるとは思わなかったのかと黒須が尋ねると、宮市は死のうと持っていたことを打ち明けます。
黒須に興味を持った宮市は、黒須の望みに従い付き合うことに。
晴れて隣人で恋人になった二人。でも宮市の殺人鬼ぶりは変わらない。
宮市は殺人を重ねても逮捕されないのだが、それは、人間の体を欲している闇の連中と繋がっているため。
処理をしている担当者の延命寺怜奈(江口のりこ)は、スタッフを引き連れて処理を敏速におこなうエキスパート。宮市をよく知る延命寺は、近いうちに黒須も殺められると言われてしまうが、宮市を愛している黒須は、それより、宮内の殺人をやめさせたい。
同じアパートの住人を殺めてしまい、それは宮市なりの美学(理由)があってのことでしたが黒須は宮市にやめるように迫る。
宮市の腕を狙って、チンピラ連中が手を組まないかと誘うが、それを断ったことで今度はチンピラたちから黒須が狙われてしまう。
宮市はチンピラたちをやっつけ、宮市と黒須は愛を誓い合うのだった。(いちおう)
江口のりこがかっこいい・好きなところ
闇の処理を担当して、指示を与える役柄の江口のりこがキマってます。なかなかカッコいい。のですが、ストーリーはブラックなコメディなので、江口のりこらしいとぼけた雰囲気もよく出ていました。
ヒロインの福原遥とは対比的な雰囲気で、そこもよかったです。
ラストが気になる・残念だったところ(ネタバレあり)
愛を伝え合った宮市と黒須が、抱き合ったところで、なぜか宮市は黒須を刺してしまう。
命に別状はなかったし、宮市は嫌いな人ではなく好きな人を殺めた方が興奮することがわかるエピソードにしたかったのだと思いますが、そこは要らなかったかも。ちょっとやりすぎな気がしたかな。
▼これもなかなかの恋愛劇です!
それではまた。
のじれいか でした。