こんにちは。 のじれいか（@noji_rei）です。
『八月の濡れた砂』は、若さゆえの衝動を退廃的に描いた青春映画です。高校生が荒ぶって思いのままに行動する姿に、時代が持つ息苦しさと、当時はこういう刺激が求められていたのだなーと窺い知れる映画でもありました。
ただ物語は荒れ気味でも７０年代のビジュアルが楽しめ、当時の空気を感じ取れる、ある意味貴重な作品でもあると思います。
今回は『八月の濡れた砂』のストーリーについて、また感じたことについて書きます。よろしければお付き合いください！
【映画】『八月の濡れた砂』
作品情報
１９７１年 ９１分
監督：藤田敏八
高校生のひと夏の物語
何やら『太陽がいっぱい』を思い出すわ
ラストのヨットが時代だなぁ……
キャスト
野上健一郎（村野武範）
西本清（広瀬昌助）
三原早苗（テレサ野田）
三原真紀（藤田みどり）
稲垣和子（隅田和世）
ストーリー
夏の湘南海岸で、高校生の男女が、性と感情を持て余しながら日々を過ごす。
海の家を経営する酒屋の息子・西本清（広瀬昌助）は、明け方、海岸で暴力をふるわれた三原早苗（テレサ野田）を見つけて話しかける。早苗を家まで送ろうとした清だが、目を離したすきに早苗は姿を消してしまう。
数日後、唐突に早苗は清の元に現れ、友人の野上健一郎（村野武範）と一緒に行動するようになる。清は早苗に恋心を寄せるが、早苗の心は……。
インモラルな時代の不自由さと自由さ
時代は昭和４０年代、１９７０年の物語で、デカダンスに荒んだ雰囲気がなかなか良い感じです。
若者の性への衝動や憧れが描かれ、今の時代に見ればインモラルではあるのですが、過ぎた時代のリテラシーのなさを指摘するのも野暮なのでしょう。
清は早苗が好きだけど、早苗は男たちから襲われたことが体と心に染みつき、一緒に行動していながらも清を受け入れようとはしない。また早苗は、姉と夏休みをすごすために東京から訪れた、優雅な別荘に住むお嬢様でもあります。
そんな清のことを、早苗の姉・真紀（藤田みどり）は、妹に手を出したと疑い、開き直った清は、真紀を衝動的に襲ったりもするのでした。
野上は誰とでも関係を持つ男ですが、心の裏では再婚した母と継父（渡辺文雄）に対して深い怒りを感じている。
また同級生で教会でオルガンを弾く女子高生の和子（隅田和世）は、同級生の中沢（川村修司）から想いを寄せられていますが、どうも和子は野上のことが好きらしい。それでも強引に迫られ中沢と関係を持った和子は、その後自死してしまいます。すごい展開ですがさらさらと進むところは、さすが昭和の青春群像劇といったところでしょうか。
野上は、継父と母から誘われたヨットクルーズに、早苗と真紀を呼び、継父と母を引きずりおろして海へと繰り出します。
ヒエラルキーに苦しむ若い男の屈折を描いた『太陽がいっぱい』は、やはりヨットの航海で、誰もいない大海原で事件が起こりますが、大海原で何かが起こるといった展開はオマージュなようにも思えてきます。
また個人的には、同時代の暗い青春映画としては『青春の殺人者』が印象に残っていて、近いものを感じる映画を期待しましたが、こちらは個人の心情の描かれ方は浅め。群像劇ですから仕方ないのですが、そこは残念に感じた点でしょうか。
映像が美しい
夏の湘南、太陽の下で１０代の男女が水着姿で戯れる場面は、初々しさも感じられる。ビーチの場面、車を夜の海に沈めてしまう場面など、相当拘って撮ったのであろうことを窺い知ることができます。
ジミ・ヘンドリックスのような演奏シーンも登場しますよ。
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テーマ曲は石川セリの同名タイトル
時々流れる曲は、映画のテーマ曲で、石川セリの同名タイトル。
タイトルのかっこよさとアンニュイな歌声がよきバランス。
石川セリとは誰かといえば、井上陽水の夫人ですね。
▼実は結構ある、昭和映画レビュー
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それではまた。のじれいか でした。
