Amazon Primeと劇場で同時公開、
又吉直樹 原作の『劇場』。
ネタバレ感想、ちょっと掘り下げつつ、書いていきます。
こちらの『劇場』は、Amazon Prime会員は無料でみることができます。
30日間の無料体験でみれますよ。
Amazon Primeで『劇場』を見る
劇場
作品情報
公開年度 |
2020年 |
上映時間 |
136分 |
監督 |
|
キャスト |
|
好きなところはありがちな「生活感」
友人と劇団を主宰する永田(山﨑賢人)は、街で専門学校生、沙希(松岡茉優)と出会います。
永田自身は自分大好き人間なのに、書いた芝居は誰からも褒められず、誰からも認められないことに猛烈なコンプレックスを抱いている。
けれど唯一永田が書いた脚本を面白いと褒めた沙希。
そんな沙希と永田は、やがて沙希の部屋で同棲生活を始めます。
沙希が暮らす下北沢の木造アパートは、オシャレとはほど遠く生活感に溢れた部屋。
芝居を酷評され傷つき自信を失ったメンタルを、人見知りな仮面で隠そうとする永田と、東京で暮らすには純粋すぎる沙希にとって、その古いアパートが「一番安全」な場所でした。
洒落たデートスポットもキレイな部屋も出てきませんが、隣のアパートから出てきそうなリアルで生活感のある永田と沙希の暮らしぶりは、多くの人に共感できるものだと思います。
最初は昼間のシーンが多めですが、2人の関係が行き詰まるにつれて、場面は夜が多くなっていく。
沙希が生活費を稼ぐため居酒屋でアルバイトをし、永田は自分のダメさを沙希に悟られないように気まぐれを装って沙希を翻弄しますが、そんな永田の態度が、精神的にも金銭的にも沙希を追い詰めるように。
はじめから永田と沙希はうまくはいかない感が満載なのですが、その割にすぐに別れないで、ずるずると続いてしまう。
うまくいきそうなカップルがすぐに別れ、見るからに無理そうなカップルがなかなか別れない。実際にそういうこと多い気がします。
なにもない、可能性しかない若い男女が、可能性に向かって集中できず、日常と未来に焦れながら肩を寄せあって暮らしている。
都心の夜景は大きなビルだけじゃない、そんなささやかな灯りが集まっていることを感じさせるところが魅力です。
嫌いなところは「男のセコさ・女の緩さ」
永田は、沙希の部屋に上がり込んでいるのですが、すべて2人分を受け持つようになり沙希の金銭的負担は増します。
永田はそのことに気がつきながら知らんぷり。
沙希から「公共料金だけ払ってもらえないか」と話されても、ここは自分の部屋じゃないし、それはおかしいよと跳ね返してしまいます。
これと同じ遣り取りを別の小説でも読んだことがあって、やはり言われた男は機嫌を損ねるのですが、そんなに嫌なものなのでしょうか。そのあたり疑問でした。
この段階でどうして別れないの?なんで??
と永田のズルさもそうですが、沙希の緩さにも苛立ちました。
神様のようにやさしく尽くしてくれる沙希に甘えまくる永田は、沙希との暮らしに慣れてしまうと、沙希の存在が創作に邪魔に思えるようになる。あまりにもありがち、だけどその気持ちもわかる。
一方で沙希は、多くの20代半ばの女が意識する「結婚」という存在が巨大化し、苦しむように。
ラスト近くで沙希も、自分の夢を永田に託しすぎたと詫びますが、それも一理あるかなという気がします。
たぶんあの永田と結婚するのは絶対に無理なので、広い部屋に越して永田に責任を与えようとすると永田が逃げることは薄々勘付いていたのかも。
友人たちが、永田に沙希と別れてあげろと迫ると、永田の「自分だけで決めることじゃない」という言い草も間違っていない気がする。
男女が別れるのに、他人が介入するのは絶対に変。
だけど周囲が見るに見かねるほど、永田が中途半端に沙希を振り回していたことを示しているのでしょう。
感想・ネタバレ
沙希は生活費を稼ぐため昼夜アルバイトをし、永田はライターの仕事が入ってくるようになるものの、それを2人の暮らしに充てようとしない。
沙希が友人から貰ったスクーターを散々乗り回して壊してしまったり、自分の知らない友人と沙希が立ち話をすると不機嫌になったり、もういつ別れるのかしか考えられない流れです。
だけど一度そこまで深くなった関係を簡単には切れない気持ちも理解できるので、焦れながらも見てしまいました。
気持ちはすごくよくわかるけれど、つらくてもどこかで決断しないと、どうしようもなくなってしまう。
情って本当どうしようもないですよね。
別れた方がいいとわかっているけど、別れる方が遥かに大変に思えてしまう。
そうして年月が流れ、沙希はもう完璧に行き詰まり、そしてやっと諦める。
けれど沙希は、悪いのは永田ではなく、年を取って変わった自分が悪いと話す。そういう考え方もあるなと、ちょっと感動させられました。
永田は、東京を離れて故郷に帰る沙希と、最後に希望のある未来について話します。
さようならは言わない。
もうわかっているのに言わない。
ラストのおよそ7分、見た人の中でも評価が別れるところです。
あなたはどう感じるでしょう。
まだみていない肩は、ぜひ、その目で感じてください。
(ちなみに現状、原作未読です)
それではまた。
のじれいか でした。