『エヴァ』は、ロボット学者を主人公にしたスペインの近未来SF映画。
天才的ロボット学者が、欧州の雪深い故郷の街に帰ってくる。その理由は、子供型ロボットを開発するため。学者は、自分の姪をモデルにロボットを造ろうとします。
主演はダニエル・ブリュール、『ラッシュ/プライドと友情』でニキ・ラウダ 役が印象的でした。SF映画とはいいながらストーリーに新しさはないのですが、映像が洗練されているのと、近未来のあり得そうな雰囲気が描かれていて、好きな映画でした。
感じたこと、ストーリーをネタバレありで書きます。
EVA エヴァ
作品情報
製作年度 |
2011年 |
上映時間 |
94分 |
監督 |
キケ・マイーリュ |
キャスト |
アレックス(ダニエル・プリュール)
ラナ(マルタ・エトゥラ)
ダヴィッド(アルベルト・アンマン)
エヴァ(クラウディア・ベガ)
フリア(アンヌ・カノヴァス)
マックス(ルイス・オマール) |
予告
美しすぎる予告と話題を呼んだみたいですが、そこまでではないかな。
10年ぶりに雪国で再会する三角関係の科学者たち
2041年、ロボットが人間社会で普通に存在する世の中。
天才ロボット科学者のアレックス(ダニエル・ブリュール)は、10年ぶりに雪深い故郷へ帰る。その理由は、以前働いていた大学の科学者フリア(アンヌ・カヌヴァス)から呼び戻され、中断していた子供型ロボット開発を再開させるためだった。
故郷には兄のダヴィッド(アルベルト・アンマン)とその妻ラナ(マルタ・エトゥラ)がアレックスを待っていて、二人の間には娘のエヴァ(クラウディア・ベガ)もいた。
エヴァは奔放で生意気盛りな少女。そんなエヴァに興味を抱いたアレックスは、エヴァをモデルにしたロボットを造りたいと考えるようになる。
ダヴィッドも、ラナも、アレックスと同じくロボットの科学者ですが、ラナは現在は研究をやめて大学で教鞭を取っている。
ダヴィッドの妻ラナは、かつてはアレックスの恋人でしたが、アレックスが研究に行き詰まり大学を去ったことで別れた過去があります。
オープニングが幻想的で美しい。ロボットの脳内の構造が肉眼にも見えて、あらゆる感情がガラス細工のように空中を舞う、独特の世界観です。
3人の関係と娘のエヴァの関係をまとめると
① アレックスの仕事上の悩み
アレックスは以前から子供型ロボットを開発していたが、感情の表現がうまくいかず苦しんでいた。子供型ロボットは従事用ロボットとは役割が異なるので、退屈だと平凡で魅力がない。けれど規制に外れてしまえば違法になるので限界がある。
悩んでいるアレックスの前に、かつての恋人レナの娘で、こまっしゃくれているけれど少女らしくて人間味のあるエヴァが現れ、アレックスの興味を惹きます。
② エヴァもアレックスに関心を抱く
エヴァもアレックスの存在が気になるらしく、学校帰りにアレックスを訪ねるように。アレックスはエヴァに感情のテストをし、ロボットに感情を吹き込ませるところを教えます。
レナは、アレックスとエヴァが接近するのを快く思わない。アレックスはエヴァを研究から遠ざけようとするが、エヴァは言うことを利かず、両親が別居していると嘘をアレックスに吹き込む。
③ アレックスの恋の悩み
アレックスの兄と結婚しているレナだが、アレックスの恋人だった当時、アレックスは子供型ロボットの開発に行き詰まり、全てを棄てて逃げてしまった。
頭の中では兄の妻とわかりながら、何度も再会することで二人の心は揺れてしまいます。
レナは、一緒に取り組んだ仕事と自分を棄てたアレックスへの怒りがある。それでも気持ちを受け入れてしまい、それを知ったダビッドは、アレックスに街を出るように告げる。
この辺りは、普通によくある三角関係です。
アレックスとロボット開発の行方・ネタバレ
兄のダビッドの気持ちを察して街を出ることを決めたアレックスは、フリアから「また逃げだすのね」と過去と同じ行動を指摘され、ぐうの音も出ません。
そんなアレックスにレナが「エヴァは二人の子供、だから似ている」のだと告白します。
ところがエヴァはアレックスとフリアの間に生まれた子供ではなかった。実はエヴァはロボットで、アレックスが途中で投げ出したロボットでした。
10年前、残されたフリアがエヴァを造り上げましたが、安全性の問題から規程外になったのをフリアが引き取ったのでした。その辺りはアレックスへの愛もあるのでしょう。
自分がロボットと知ったエヴァは興奮状態になり、フリアを崖から突き飛ばします。フリアは亡くなってしまい、エヴァは解体を迫られます。
アレックスは自らの手で、エヴァを解体することを決めるのでした。
感情は大切だが、過剰だと身を滅ぼす?
ロボットも楽ではありません。平凡だとつまらないが、情緒的すぎれば厄介扱いです。
アレックスはロボットの猫を側に置いています。自由型で規制のないロボットですが、それも規定外だから本当は違反。だけど猫なので、たかが知れているのか職を失うほどの違反ではないみたいです。
フリアは規定外の人型ロボット、エヴァを引き取るにあたり研究者を辞めている。教師になったフレアにアレックスが事情を問いますが、フレアが口をつぐむのにはそういった理由からでした。
確かに兄夫婦に子供が生まれたら、弟が知らないのは不自然なので、振り返れば納得できるオチではあります。
エヴァの立場になれば、母親への複雑な思いがあっても不思議ではありませんが、母を亡くした悲しみより、叔父への愛慕の感情の方が強まっているようでもあり、人間としてもどこか偏った思考ではある。
エヴァや猫ロボットと対比する存在として、忠実なロボットのお手伝いマックス(ルイス・オマール)が登場します。優秀で働き者で、かといって冷淡でもなくほどよい温かさも備わっている。
たとえ子供でもロボットなので、所詮は人間の都合に合わせた存在。便利さプラスα程度の程よい性格しか求められないのはわかります。
エヴァが人間だとしたら困った大人に成長しそうですが、解体されることはもちろんない。
では逆に人間がロボットになったと仮定したら、どれだけの数が規程の枠に収まるのでしょうか。少なくとも私がロボットだったら、間違いなく規定外のロボットで、解体される運命を辿ることになりそうです。
▼クローン人間・CG女優が登場する作品です
それではまた。
のじれいか でした。