結婚後なんらかのかたちで起こってしまいがちな嫁姑問題。
最近では義家族とは別居する場合が増えていますが、離れているぶん、息子の家庭のことが知りたくなり、ついつい行動に移してしまう姑も多い。
一方で自分が嫁の立場だったときのことを思い起こし、嫌だった経験を嫁にさせたくないと考える人や、いい関係を築こうと模索する人もいるみたいですが、その実態は?
ここでは昭和の嫁が姑になった例を挙げ、いい距離を保つため、衝突を避けるためにはどうすればいいかを考えます。
昭和のお嫁さんは言いなりだった?
『自分が経験した嫌なことを嫁にさせたくない』
そう感じているお姑さんは多いと思います。一見すれば良心のようですが、それは自分と姑の関係ではなく、自分の価値観に合った嫁姑関係を築きたいと考えてのことなのかも。
息子の嫁ともっと仲良くなりたい。
気持ちは正しいようでも、相手が望むこととはズレているのかもしれません。
昭和の嫁・結婚の条件は介護
中部地区に暮らす沙織さん(仮名)は、バブル期に20代で結婚して二人の子供を育てた50代のパート主婦です。
結婚を決めたとき、夫は25歳、沙織さんは23歳。義両親が結婚を認めるにあたって出した条件は次でした。
・本家の長男の嫁として家のしきたりを守る。
・実家近くに住み、将来的には自分たちの介護をする。
沙織さんからすれば、物のように扱われ不快に感じたものの、当時はそういう考えが少なくとも沙織さんの周辺では主流だったため、義両親の言葉を仕方なく受け入れました。
結婚式では式の費用を義両親に負担してもらったため、ご祝儀は義両親の手元に。新居も姑に決められてしまい、沙織さんは従うしかありませんでした。
生活費以外の通帳や生命保険は、義母の知り合いのすすめで始めた契約もあると、長年、沙織さんには渡されなかったそうです。
結婚後は、女の子と男の子の子供に恵まれた沙織さんですが、姑からはもう一人男の子を産んだ方がいいとしつこくされ、女の子には高学歴は必要ないなど勝手な持論を撒き散らされて、ストレスで自律神経が乱れ、円形脱毛症で悩んだこともありました。
夫の実家は本家なので、お盆には親戚たちが集結。沙織さんは労働力として駆り出されます。夫は旧知の親戚と座って飲んでいればいいだけですが、沙織さんだけが何も食べられない座れない状態でこき使われ、ひと段落しても居間には呼ばれず、台所で残り物をつまむだけなど散々でした。
現在、沙織さんは、子供は自立して義実家近くのマンションに夫婦で暮らしています。
高齢になった義理両親の病院への送迎や家事は沙織さんに任されています。沙織さんの夫は家事がまるでダメなので、沙織さんが義実家の用事でくたくたになって帰宅してもテレビを見ながら待っています。
何の楽しみもない沙織さんの唯一の生きがいは、息子夫婦との時間でした。
沙織さんは、息子の嫁には自分と同じ思いをさせたくない。仲の良い関係を築きたいと願っていました。
昭和の嫁、姑になる
沙織さんの息子は高校教師。赴任先が車で二時間近い学校になったのを機に、実家を出て一人暮らしを始め、赴任先で知り合った女性と結婚を決めました。
息子が選んだ女性はやはり教師。沙織さんは、結婚は本人同士の問題だからと、条件をつけたり、相手を調べることはしませんでした。
でも沙織さん夫婦は、結婚したら嫁は仕事を辞めて家庭に入るものと普通に考えていたので、嫁が仕事をやめる気がまるでないことを知って不快に。
沙織さん自身、姑から嫌な思いをさせられてきたため、強く言いたくありません。なので沙織さん夫婦は、息子にさりげなく、妻は家庭を守るものだからとアドバイスしました。ですが息子夫婦はまるで聞く耳を持ちません。そのうち嫁は妊娠、出産してましたが、変わらず仕事を続けています。
孫ができた沙織さんは、毎週、車で一時間ほどの距離に住む息子家族を呼んで食事会を開いています。それ以外にも関東にいる娘が帰省したときは、家族揃って外食を楽しむのが常です。
一見友好的な沙織さん一家でしたが、沙織さんは嫁に対してだんだん腹立たしさを感じるようになりました。理由は幾つかありますが、まず仰天したのは、実家にいたとき家事などしなかった息子が、嫁に言われて家事分担を担当するようになり料理をしていることでした。
「そんなことしないで」沙織さんは息子を窘めますが、息子は母の言葉が理解できません。沙織さんは一家の大黒柱が台所に立つのはおかしいと思うし、嫁が食べる料理をつくるために息子を育てたのではないという気持ちになってしまいます。
沙織さんは、気づけば息子に嫁の批判や不満を漏らすことが増えてきました。
会わないと寂しいが、会うとイラつく心理
沙織さんは、本家の家事労働もあまり嫁にはさせたくないと考えていました。嫁からは感謝されると思っていたのに、嫁はそんなことまるで頭にないらしく、感謝の言葉もありません。
それどころか、嫁は自分たちより嫁の実家を大切にしているのが見え見えで不愉快になることがたびたびです。
「息子夫婦にあれこれ言いたくないが、目に入ってしまうと気分が悪くなることが多い。息子や孫に会いたいのに、会えばイラついてしまう。だけど会わないと寂しい」
そんな矛盾を抱えていたそうです。
平成・令和の嫁の本音
姑が嫁と仲良くしたいと考えても、相手が同じ距離感を望んでいるとは限らない。普通の人付き合いのように、自分と相手の考えが違うのと同じです。
嫁の方も姑と仲良くしたいと考えていても、「仲良くする」の距離感や感覚が違えば噛み合うはずがない。嫁の方が最初から姑を嫌いなことは考えにくく、姑が知らず知らずのうちに自分の常識を押し付けたことで、嫁の感情が変化してしまうのが常だといえます。
どうしたらいいのか?
昭和の嫁の沙織さんのように、自分が結婚したときに受けた姑からの圧力や嫌がらせを嫁に経験させたくないと考えるのは、健全で美しい感情なのだと思います。
だから優しくしてあげたのに、なぜか嫁には伝わらないと嘆く姑が多い。
気持ちはわかる気がするのですが、世間の価値観は大きく変化している。結婚で得られるもの、望むものものだって違います。
たとえば女性の仕事についても、専業主婦が多かった姑世代からすれば、頭の中では理解できても、息子の嫁が働くことに抵抗を感じる人もいる。妻は家にいて夫の世話をするべきと考える人は結構多いと聞きます。
男性の給料はあがらず、副業は当たり前の時代で、女性が働くのは極めて普通のことになりました。先の見えない時代でもあり、男女問わずキャリア形成に熱心でもあります。
なので、姑と嫁が、距離を縮めて付き合おうとすること自体が、不自然で無理があるのかも。年齢も育ちも違う赤の他人同志が、無理に仲良くしようとすれば噛み合わなくなるのも頷けます。
また別の問題が本質であることも。沙織さんは嫁に苛立っているようで、実は義両親の介護問題のストレスを抱えていたことを認めます。無関心な夫に何も言えず、息子夫婦と一緒にいる時間で憂さ晴らしをしたかったのです。夫と向き合うことで、随分気持ちが楽になったようでした。
息子の嫁に対して過剰な期待をせず、親戚付き合いくらいに軽く考えておくと、ちょうどいいのかもしれません。嫁の立場の方は、できれば姑と直接やりとりする機会を減らし、実子の夫とコミュニケーションをはかるように仕向けていくことをおすすめします。
姑からすれば、息子や孫がかわいいのは当然ですが、息子の優先順位は入れ替わっています。
人は生きていれば変わるもの。変化する者同士が寄り添い続けるのは肉親でも大変です。
必要以上に他人に依存せず、自分を信じて生きることで、束縛から解放されてよりよい人生が送れるのではないでしょうか。
息子に依存してしまう母親の特徴はこちらです
それではまた。
のじれいか でした。