こんにちは。 のじれいか(@noji_rei)です。
『騙し絵の刃』は、時代の波に押されがちな出版業界の生き残りを賭けたコンゲーム。
大手出版社の経営者層の思案と、編集者たちの純粋さと腹黒さが、爽快でテンポよく描かれます!
キャストは大泉洋、松岡茉優、佐藤浩市、木村佳乃をはじめ、大変豪華。
今回は『騙し絵の刃』のストーリーについて、また感じたことについて書きます。よろしければお付き合いください!
【映画】『騙し絵の刃』
作品情報
2020年 113分
監督:吉田大八
出版業界で実際に起こっていそう!
松岡茉優はさすがの存在感だった!
▼吉田大八監督の作品はこちらにも
キャスト
<薫風社>
・速水輝(大泉洋)雑誌『TRINITY』編集長
・高野恵(松岡茉優)文芸誌『小説薫風』編集者
・江波百合子(木村佳乃)文芸誌『小説薫風』編集長
・三村洋一(和田聰宏)文芸誌『小説薫風』編集者
・伊庭惟高(中村倫也)薫風社、先代社長の息子
・宮藤和生(佐野史郎)薫風社常務
・東松龍司(佐藤浩市)薫風社専務
・矢代聖(宮沢氷魚)新人小説家
・城島咲(池田エライザ)人気モデル
・郡司一(斎藤工)外資ファンド代表
・二階堂大作(國村隼)大御所作家
・久谷ありさ(小林聡美)文芸評論家
予告
ストーリー
本が売れず出版不況の時代、あらゆる雑誌が廃刊に追い込まれている。
そんなとき、老舗出版社、薫風社の社長が急死して権力争いが勃発する。
社長には実子の伊庭惟高(中村倫也)がいるがまだ若く、周囲からは専務の東松龍司(佐藤浩市)が時期社長になりそうだと噂される。
薫風社の情報雑誌『TRINITY』の編集長・速水輝(大泉洋)は、東松の部下ではあるのだが、変わり者で本心が見えにくい、食えない男だ。
同じ頃、同社の文芸誌『小説薫風』の編集者・高野恵(松岡茉優)が、大御所作家の二階堂大作(國村隼)に率直な書評を口にしたことが原因で『小説薫風』から外されてしまった。
すると自宅の書店で店番をしていた恵の前に、突然現れた速水が、『TRINITY』に恵を誘う。
そして速水は、恵が推す『小説薫風』の新人賞の公募原稿の存在を知り、筆者の矢代聖を探しだし『TRINITY』で連載を決めてしまうなど、強引で敏速な行動を取るのだった。
恵は、これまで経験したことのない、速水の仕事ぶりに翻弄されて…。
速水は純粋な男ではあるが…
『TRINITY』の編集長の速水は、次期社長をねらう専務の東松の懐刀みたいな立場ですが、速水自身はつかみどころがなく、何を考えているのかわかりにくい。
速水はあらゆる場所に顔を出し、言いたいことを言って、やりたいことをやって離れていく。率直で大胆な人物です。
そんな速水は、薫風社でも出世や地位にはそれほど興味がなく、むしろ薫風社も早く辞めたいくらいに思っている。ただやりたいことができるから地位や立場があるのは好ましいと考えているようなところがあるのでしょう。
「大変でもいい、楽しいことがやりたい」と好奇心旺盛な人であることは伝わってきます。でもそのためになら手段を選ばず、平気で部下を巻き込んでしまう。
あと速水は、面白いことが何より重要で、そのためなら全てをブチ壊すことも仕方ないとういう考え。なんだか持久力がなさそうで、雑誌の編集は不向きには思えてきました。
謎の作家の正体は?(ネタバレあり)
実家が書店を経営し、文学に対する強い思い入れがある恵は、文芸誌にいたときの新人賞の選考会で、矢代聖という人物が書いた原稿を推します。でも編集長の江波百合子(木村佳乃)に選考委員を混乱させるという理由で落とされていました。
恵は矢代聖とコンタクトを取ろうとしますが連絡がつかない。それを知った速水が矢代の作品を雑誌に連載をしようと言い出します。
やがて唐突に登場した、矢代聖(宮沢氷魚)は、人気モデルでありながら事務所に黙って作家活動をしていた城島咲(池田エライザ)とセットでメディアに露出。速水の手で若い層からの人気を煽ります。
一躍人気作家になった矢代でしたが、常務の宮藤和生(佐野史郎)と同席した記者会見の壇上で、小説は自分が書いたものではないと爆弾発言をして周囲は騒然となる。その責任を負うかたちで、宮藤は辞任します。
実は、矢代聖の原稿を書いたのは、幻の作家、カノクラ・エイイチ(リリー・フランキー)。腕試しで送った小説に恵が反応し、速水の手で仕掛けを仕組まれていたのでした。
これにより、目障りだった常務の宮藤和生は失脚。『小説薫風』は廃刊になり、編集長の江波も飛ばされます。
上層部争いの結末は?(ネタバレあり)
佐藤浩市演じる専務の東松は、現在資料館になっている場所を利用して、本を中継ぎ店を通さず、自社で印刷製本して書店に発送する施設の建設を構想していました。計画は先代社長も了承済み。東松にとっては5年もの年月をかけた念願の構想でした。
一方、先代の息子である中村倫也が演じる伊庭惟高は、東松の構想を知りながらアマゾンと独占契約を結びます。それにより『TRINITY』もウェブ化されて、コンテンツになることが決まります。
『TRINITY』のメンバーは雑誌への思いがあるので複雑ですが、変化を受け止めなければ、未来はないことを悟らされます。
それはもちろん、高野恵も同じでした。
高野恵の逆襲(ネタバレあり)
実現が難しくても楽しいことを優先させたい。攻めの男、速水に翻弄された高野恵は、会社でのこととは別に、実家の書店が経営難に陥っている現実とも向かい合っています。
恵の父は、立ち読みOKの書店を一人でどうにか維持してきましたが限界にきていた。そこで恵は薫風社を辞め、実家の書店を改装して、ここでしか買えない本を販売する個性的な書店を開店させます。
恵の書店は、カノクラの久々の新作を発表する場として注目を浴びる。カノクラは薫風社と契約するより、編集者として本質をつかんだ指摘をしてくれる恵の元で、薄利多売にならない取引を選びます。
大変だけれど面白いことを優先する。速水から教わった考えを恵なりに形にしたアイデアでした。
おそらくは速水と出会わなければ思い付かないアイデアだったかもしれない。もし以前から考えていたとしても実現させることは叶わなかったでしょう。
恵からしっぺ返しを食らった速水は悔しがります。でもすぐに立ち直り、ストーカーを痛めつけて逮捕された、モデルの城島咲に再度接近して、新しい企画を持ち込みます。
今を大事にする姿勢
本編の中で時折、「あのときはこうだった」「でも今はそうではない」と過去と現在を比べる場面が登場します。
過去に必要以上にこだわらず、以前自分が発信した言葉であっても「今はそうではない」と時の流れを優先させる姿勢には、心地よさを感じました。
たとえば、東松は、文芸資料館として所有する土地を、製本と物流の拠点にして、取次店を通さずに本を作ることを考えていましたが、それは5年越しの想い。言い方を変えれば5年も前のことなのです。
それだけ時間が過ぎれば、すでに別のニーズが起きていることもある。つまり東松の考えはすでに古くなっていた。
時間は想像よりずっと早く流れる。だから追いつかれないためには、もっとも難しそうなアイデアを見つけて実行するしかない。(←速水が東松にかけた言葉)
ずっと変わらない言葉がある反面、消えてゆく言葉も存在する。消えていったり古くなった言葉はビジネスの場面では特に多いものなのでしょうが、日常で言葉の責任みたいなものに囚われがちな人にとっては、重荷を降せる場面だったかもしれません。
今が楽しいことが一番大切。奇しくも出版社で飛び交う言葉としては興味深く、ある意味皮肉めいているようにも思えます。
あとこれ、主人公・速水を大泉洋が演じているので、そこまで冷淡な仕上がりになっていない。どうかするとコメディっぽさすら感じられました。
大泉洋をモデルに書き下ろされた小説だそうですが、もし別のイケメン俳優が演じたらシャープな物語になっていたかもとふと想像てしまいしました。
(それはそれで観たい気がする)
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※本記事の情報は2022年1月時点のものです。
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それではまた。のじれいか でした。