映画『ブエノスアイレス恋愛事情』。
ほぼタイトルどおりで、都会に暮らす男女の恋愛が描かれます。
30代独身の男女が出会いと別れを繰り返す、リアルな日常が味わい深い作品でした。
どこが面白かったか。面白くなかったところはどこか。ネタバレ感想つきでご紹介していきます。
ブエノスアイレス恋愛事情
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基本情報
公開年度 |
2011年 |
上映時間 |
95分 |
監督 |
グスタポ・タレット |
キャスト |
・マルティン(ハピエル・ドロラス) ・アナ(イネス・エフロン) |
予告
面白かったところ・満たされない2人の焦燥感
アルゼンチンの首都、ブエノスアイレスに暮らす男女。
フリーでウェブデザイナーをしているマルティンは仕事に不自由してないけれど、狭い自室に籠って仕事をしている完璧ヲタ青年。
恋人はアメリカに行ったきり帰って来なくなってしまい、彼女が置いていった犬を仕方なく飼っています。
仕事場は自宅で、しかも広場恐怖症と人混み恐怖症なため、遠出したり賑やかな場所に出るのは好まないため、出会いのチャンスはネットが主。
一方、建築家のマリアナは、4年間付き合っていた恋人と別れて、やはり一人暮らしをしています。建築家なので建物や街並みは好きだけど、実際の仕事は店舗のディスプレイ。展示用のマネキンを恋人に見立てたり、閉所恐怖症でエレベーターに載れなかったりとなかなか不自由な日常です。
2人とも苦労していますが、深刻過ぎない軽いタッチなところがいい。
台詞もじーんと沁みるものがありました。
自分の元を逃げるように去った恋人を思い出しながら、犬の調教師やチャットで新しい出会いを模索するマルティンですが、どの女性ともうまくいかず、1人になって虚しさがこみ上げてしまいます。
わかるなあ。
好きじゃない相手とデートすると別れたあとで疲労して、虚しくなる感じ。
無理し過ぎですね。
好きでなくても無理せずに過ごせる相手となら、虚しい気持ちにはならないのかも、などと考えてしまいました。
満たされないのはマリアナも一緒で、いいなと思った相手からは求められなかったり、求められる相手からはマリアナがダメと感じてしまったりで落ち込みます。
出会いに期待し過ぎると期待外れに終わることが多いものですが、2人はそんな感じで日々を過ごしていきます。
またこのマルティンとマリアナが出会いそうで、なかなか出会わない。そんなところも見所です。
都会に暮らす男女の日常がおしゃれ過ぎず、かといって惨め過ぎず、等身大で描かれているところが魅力的でした。
またブエノスアイレスの街並みが、男女2人の視線から描かるところも面白みがあります。
高層ビルや街並みがふんだんに出てくるので、ブエノスアイレスに行ったことがある人だと、より楽しめる風景ではないでしょうか。
ブエノスアイレスに行ったことがない私から見ると、洗練された没個性な風景という印象と、逆に特徴的な部分が見え隠れして、その辺りは東京や他の都市と同じかなという印象でした。
大都会に暮らす独身男女の日常という意味では、特定の場所を意識しなくても十分楽しめる映画だと思います。
面白くなかったところ・「あれ、恐怖症は?」
マルティンは広場恐怖症で電車やバスも好まないヲタクというか、 今で言うところのステイホームな青年なのですが、女性に誘われると好きでもないのに、なんとなく相手に合わせてしまいます。
「恐怖症はどうした?」とつっこみを入れたくなりました。
同じ頃、好きではない男性から食事に誘われたマリアナは、20階のレストランまで階段で上がるマイペースぶりを発揮します。女は強い。
全体をとおして、恐怖症に対しての描き方は思ったほどではありませんでした。
私は揺れ恐怖症なので、その辺りを面白おかしく描いてくれることを期待していたんですが、そこは外した感じです。
あと話に直接関係ないですが、2人が同じ思考を持つエピソードとして、窓のない暗い部屋を明るくするために、壁に穴を開けて窓をつくってしまうところは仰天しました。
賃貸?
賃貸だったら退室するとき現状回復なんじゃないの?
鉄筋の駆体に穴開けて大丈夫なの?
と驚きと疑問で大変でした。
話のなかでも違反だとは言っているのですが、日本だったらそもそも発想しない流れに思えました。
お国柄なのか、ネタなのか、純粋に引っ掛かったところですね。
ネタバレ・感想
一生懸命に働きながら生きているけど、上手に生きているとは言い難い不器用な2人、マリアナとマルティンはたびたびすれ違いながら、ようやく出会います。
実は案外近くに住んでいる2人が、このまま会わずに終わるのかもと思いましたが、そんなことはありませんでした。
息苦しさを感じてしまう今の世の中で、ささやかな幸せを求めているのに叶わずに、葛藤する2人からは不思議な共感を得られました。
壮大なラブストーリーではありませんが、大都会のなかで小さな恋愛はこうやって生まれて育まれるものなのかも。
そんなリアルな感じが、明日への元気を与えてくれる映画でした。
それではまた。
のじれいか でした。