映画『美しい星』は、三島由紀夫の原作を吉田大八監督が映像化したものです。
予報の当たらない気象予報士が、空飛ぶ円盤と遭遇して地球を救おうと奮闘するようになるといったお話。深く考えると、なかなか重いテーマを扱ったSF映画でした。
主演のリリー・フランキーの息子役として亀梨和也も出演しています。
美しい星
作品情報
製作年度 |
2016年 |
上映時間 |
127分 |
監督 |
吉田大八 |
原作 |
三島由紀夫 |
キャスト |
リリー・フランキー 亀梨和也 橋本愛 中嶋朋子 佐々木蔵之介 |
予告
太陽系連合・大杉一家
テレビのお天気コーナーに出演している、気象予報士の大杉重一郎(リリー・フランキー)は車で帰宅途中、突然、意識を失って見知らぬ場所で目を覚ます。
優柔不断で当たらないことで有名だった重一郎だったが、なぜか突如、温暖化に対する不安や警告、地球を守りたいといった言動が増えていく。それは重一郎は自分は火星人だと思うようになったから。
息子の一雄(亀梨和也)は、バイク便のメッセンジャーとして働くフリーターだったが、政治家秘書の黒木(佐々木蔵之介)と知り合い、黒木の手伝いをするように。やがて自分が水星人だったと気づく。
娘の暁子(橋本愛)は、ストリートミュージシャンの曲に影響を受ける。そして宇宙と交信ができるようになり、自分が金星人だと思うように。
母の伊余子(中嶋朋子)は大杉家では唯一の地球人だが、家族とうまく繋がれない虚しさを、ミネラルウォーターのマルチ商法に傾けるように。売りまくり表彰されるが、所詮は怪しい商法なので、すぐに偽造がバレて追い詰められる。
なぜ、家族で惑星が違うのか。見ていて疑問でしたが、それは地球での使命が違うからだと一雄と暁子は話しす場面があり、納得できました。
わかるかと言えばわからない
気象予報士の重一郎は、奇妙な現象に遭遇してからは、打って変わり、確信的で怪しい発言をするようになる。
最初は面白がられたが、発言がエスカレートするうち、番組中の発言が度を越して謝罪を求められるが、どうしても局の指示どおりに謝罪できない。
暁子は同じ金星人だというストリートミュージシャンの子供を妊娠。
一雄は黒木のバックアップを得て政治家を目指そうと考えるようになるが、結局は利用されているだけ。
温暖化など地球で起きる自然現象は、エネルギーの過剰消費やオゾン層破壊によって起きたのではなく、単なる自然現象に過ぎない。人類がコントロール、抑制できることではないのだから、議論して騒ぐだけ無駄なのだと政治家秘書の黒木は言いますが、実際そうなのかもしれないと思えてきます。
それに火星人のはずの大杉重一郎が、地球の心配をそこまでするのは、疑問に思えたところでした。
さいごに・感想など(ネタバレあり)
物語の前半は、大杉家の3人が、何らかの現象を体験したことで(実際に体験したかは不明)自分が地球人ではなく太陽系連合の一員と感じるところは、なぜそう感じたか理由は不明瞭ではあるものの、それなりに楽しめる展開でした。
ただ後半に向かうにつれ、暁子の妊娠、一雄が地球を変えるために政治家への野心を抱くが利用されていただけなど、結局は地球人に弄ばれただけ、というオチは残念でした。
極め付けは、息子の一雄が父の重一郎に、自分たちがしてきた責任が取れない癖に、自分が得てきたものを捨てられない癖に、偉そうなな発言をするなと口論に発展する場面。重一郎は倒れて病気が発覚するという展開もありがち。次世代継承への問題は、親子間で話し合うことは大切でしょうけれど、そんなことで解決できるような簡単な問題でもないはず。
宇宙連合が急速に失速する展開は残念でした。どうせならもっと爆発して欲しかった。でも原作三島由紀夫だけあって、テーマは人類への警鐘といえる深いものではありました。
演出的には一雄演じる亀梨和也のバイク便のお仕事風景は颯爽としていたし、橋本愛はやはり美しかったですね。
▼SF映画はこちらにもあります
それではまた。
のじれいか でした。