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【映画】『Arc アーク』(不老不死)終わりなき人生は幸福なのか?【ネタバレ・感想】

【映画】『Arc アーク』(不老不死)終わりなき人生は幸福なのか?【ネタバレ・感想】

 

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こんにちは。 のじれいか(@noji_rei)です。 

『Arc アーク』は、SF作家のケン・リュウが原作の映画。不老治療を受けて135歳まで生きた女性の物語です。

近未来の不老不死を主軸に、生死感から窺える希望と絶望、生き続けることの限界、また家族の繋がりも描かれます。

近未来SFとはいえ、見慣れた現実的な風景が続きます。

ほかの作品に例えれば、設定や内容はまったく異なるのですが、『わたしを離さないで』(原作:ケイ・イシグロ)に世界観は近いように感じました。

noji-rei.hatenablog.com

 


今回はこちらの『Arc アーク』の物語のご紹介、そこから考えさせられたことについて書きます。


よろしければお付き合いください!

 

 

 

作品情報

2021年 127分  
監督:石川慶
脚本:石川慶、澤井香織
原作:ケン・リュウ

石川慶監督は、ある殺人事件から人間の本音を炙り出す『愚行録』や、ピアノコンクール参加者たちの当日を描いた『蜂蜜と落雷』で高い評価を得ています!


キャスト

リナ/セリ(芳根京子)
黒田永真・エマ(寺島しのぶ)
黒田天音(岡田将生)
夏南子/奈々(清水くるみ)
佐々木(井之脇海)
ハル(中村ゆり)
リナ(倍賞千恵子)
英美(風吹ジュン)
利仁(小林薫)



ストーリー


舞台は近未来。不老不死の治療を受けて17歳から135歳までを生きた、ある女性の一生を描いたお話です。

17歳のリナ(芳根京子)は息子を出産しますが、子どもを愛することができず置き去りにします。

それから2年後、19歳になったリナは、化粧品メーカー・エタニティ社のトップであり、遺体を生きたままに近い状態で保存するボディアワークスという(プラスティネーション)技術を持つ黒田永真エマ(寺島しのぶ)の元で技術者として働き始めます。

永真には弟・天音(岡田将生)がいるのですが、天音は永真のように遺体を身近に置くことで死の恐怖を克服できると考えるのとは違い、生きながらにして時間を停止させる不老不死の現実を目指していました。

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やがて30歳になったリナは、精神のバランスを崩し、会社の実権を追われた永真の仕事のあとを継ぎ、実質的な責任者になります。

そんなリナの前に、細胞の劣化を抑制させる技術を完成させた天音が現れます。

不老不死は国で認可され、希望者には使われることになりましたが、高額なため全員が受けられるわけではありません。またこれまでの生死感を覆すことになるため世論での批判も少なくありません。

天音とリナは愛し合うようになり、天音はリナに結婚を申し込みます。でもリナは息子を愛せなかった過去があるので、子どもを欲しいと考えるであろう天音との結婚を躊躇うのでした。ただ天音は不老不死の世の中を手に入れているので、気長に待つと伝え、その結果2人は結婚します。

そしてリナは天音の仕事のサポートに就き、不老不死の治療を受けるのでした。天音とリナの時間は終わりなく続くはずでした。ところが……

 

永真が主催するプラスティネーションとは?


永真がおこなった遺体のプラスティネーションは、肌を柔らかい状態で保存させる技術です。血管に特殊な樹脂を流し込むことで、遺体を生きていたのと変わりないままで保存でき、遺族のそばに置くことができるもので、リナが若いころは流行った技法でした。


永真は物体としての遺体を身近に感じることで、死ぬことへの恐怖から心を解放させることを目指していました。

 

不老処置のその後


永真の弟である天音は、永真のプラスティネーション技術を応用して不老処置を開発しました。細胞の老化を防ぐ薬を流し込むことで実質上、老化しない肉体をつくることに成功したのです。

もちろん天音自身もリナも不老処置を受けたのですが、永真は自分の肉体に縛られ続けることを拒み、処置を行いませんでした。

また不老処置技術も40歳近い年齢には効かないケースや、遺伝子異常があった場合は却って老化を早める結果になることがわかってきます。

しかも遺伝子異常のケースには、開発者の天音自身が含まれていたのです。永遠の時間を手に入れたはずの天音とリナの関係は、天音の死によりあっけなく終わり、リナは一人残されます。

 

リナのその後(ネタバレあり)

 

不老不死を成功させ、人類を死の絶望から救ったと考えていた天音は、何らかの事情で不老処置を受けない人が、誰でも入居できる施設の「天音の庭」を建設しました。

やがて天音の死後、リナは「天音の庭」で働くようになりますが、ある日、そこに利仁(小林薫)と英美(風吹ジュン)の70代の夫婦が入居してきます。余命いくばくもない英美に寄り添う利仁ですが、利仁は近場の小屋を借りてそこから施設に通い、施設とは距離を置こうとします。

そんな利仁の態度に、リナはあることを察します。利仁は自分が捨てた息子ではないかと。

リナは実年齢で100歳近くになっていましたが、そのとき亡くなった天音が生前精子を凍結保存していたため、その後娘のハルを出産して育てていました。

 

不老不死は羨ましいか(ネタバレあり)


すごく月並みな言葉になってしまいますが、人生は長く生きることよりどう生きるかが問題。そのことについて考えさせられる話です。

リナは最初17歳で出産した子どもを捨てて、自由を選びます。けれど若いリナには自由に生きることとはどういうことなのかわかっていない。そうして自我と必死に葛藤していたところに、ボディワークスを手がける永真と出会い、人生が変化していきます。

 

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天音が他界したのは、リナが50代のとき。そこから人生をやり直そうと考えたのか、躊躇していた子どもを産み育てることを選択します。普通であれば後悔してもやり直しが効かない願望を叶えてしまえるところは素直に羨ましく感じました。それにまったく老化しませんし。


けれど段々、リナが年齢を重ねるごとにある違和感が湧いてきます。

リナの心の成長は?(ネタバレあり)


リナは、天音が残した施設「天音の庭」で働きながら娘のハルを育てています。 

自分は永遠の命を持ちながら、死にゆく人を支えているのです。治療を受けない理由は費用の問題や倫理観などさまざまです。

リナ以外のスタッフたちは全員、治療を受けていて、入居者たちを一生懸命支えてはいますが、どこかきっと他人事のように見えます。

やがて、リナの息子の利仁が、妻の施設の英美を入居させます。そのためリナとの接点が多くなりますが、利仁が不老化処置をしていないことを知ったリナは受けさせようとするものの利仁は頑なに拒否します。

そんな中でもリナの外見は変わらないのですが、変化しないのは肉体だけでなく、心も変わらない、つまり成熟していないのではと思えてきます。経験は脳にインプットされないのでしょうか。そこがちょっと違和感がありました。

たとえ外見が若くても、リナの息子である利仁や、その妻の英美よりも長く生きているぶん人生経験を積んでいるはずで、まして生死に関する仕事をしているのに、外見以外に滲み出る深みや味わいがまったく感じらませんでした。

その後、利仁は、母であるリナに、リナが消えた後の自分の生き様を淡々と語り、英美と出会えたことで生まれ変わったと話します。

そして「そろそろ自分の人生を生きるときだ、母さん」と言うのでした。

一体リナは長く生きて何をしてきたのだろう。彼らのように生き様がないんですよね。

永遠性やアンチエイリアシング、若いことはそれだけで価値のあることなのですが、それが亡き夫の意向だったにしろ、若さに囚われ続け、一日の価値を失ってしまったら、何のために生きているのか客観的に見てよくわからなくなるから不思議です。

モノクロの世界で見せる理由は?(ネタバレあり)


リナの周りには、不老化処置をしている人と、処置をしない人がいます。普通に考えれば、不老不死を手に入れた人の方が幸せに思えますが、リナ自身がまったく幸せそうに見えないため、一体何をしたいのか疑問に感じてしまいます。

リナ自身も口にしていましたが「世界から置き去りにされていかれるのでは」と不安があると言い、それが気の毒にすら思えてくるので不思議です。

また、映画の撮り方として面白かったのは、時折、モノクロ画面に切り替わるところ。これはリナが89歳になった頃からのようなのですが、おそらく本来の生き方であれば、リナの人生に存在しなかった時間として表現しているのでしょう。

あと、変わったところでは、劇中にたびたび、亀が登場します。長生きや生の象徴として扱われる亀の存在ですが、娘が可愛がっていた亀の死と、息子の利仁の厳しいけれど愛のある言葉が、終わりのないリナの人生に終わりを迎えさせることを決意させたのかもしれません。

 

名優の演技が光る(ネタバレあり)


物語としては主人公のリナの人生が描かれ、主演は芳根京子なのですが、正直にいえば脇役の方が輝いていました。

前半は、かなり癖のあるキャラ、寺島しのぶ演じる黒田永真が、まだ何も若い永真に死体について熱く語るのがなかなかいい。

小林薫が演じるリナの息子・利仁は、物語の後半に登場します。
その妻・英美を風吹ジュンが演じていますが、正直存在感がすごく、物語に一気に深みが増します。

この存在感の違いは、単に年齢だけではないと思うし、もしかしたら意図的にリナという女性の人格を薄めているのかもしれませんが、だとしてもやはりリナは、100歳overまで一体何をして生きてきたのだろうと疑問に思えます。

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またラストの砂浜では、倍賞千恵子が加齢を受け入れ死を決めたリナになって登場します。

芳根京子演じるリナは、あまり中身のない女性という印象だったので、こんなに一気に説得力のある女性になれるものか疑問でしたが、そこでもこの場面で感動できてしまうところが狡い。(いい意味で)

邦画ではあなり多くない雰囲気のSF作品です。死ぬことではなくどう生きるかについて深く考えさせられました

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※本記事の情報は2021年11月時点のものです。 最新の配信状況はサイトにてご確認ください。


それではまた。のじれいか でした。