映画『青の帰り道』。
高校生7人の10年間を描いた話。
Amazon Primeで観た映画です。
配信サービスで映画をみると、劇場で観ればよかったと後悔する作品と出会うことがたまにあるのですが、これはまさにそう感じた一本でした。
劇場で観ればよかったわ
キラキラした青春ストーリーではなく、生々しくて暗いけど必死に生きてる姿を観たい。
そんなときにおすすめできる映画です。
青の帰り道
作品情報
製作年度 |
2018年 |
上映時間 |
120分 |
監督 |
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キャスト |
●カナ・歌手志望
(清水くるみ)
●リョウ・野望だけの男
●コウタ・マリコの夫
●ユウキ・大学生 (冨田佳輔)
●キリの母
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オリジナル脚本なのがポイント高し
公式サイト
予告
好きなところ・キラキラではない青春
2008年に高校を卒業した同級生たちの、その後の10年間を追う偶像劇です。
仲良し7人が、時代の波に揉まれるようにして生きる姿が描かれます。
70年代ふう映画というのか、10代のキラキラ目線がずっと続くストーリーではなく、彼らが、大人の世界に巻き込まれて、厳しさを目の当たりにするところがこの映画の見どころです。
青春劇だと登場人物のなかに、大きな夢を持つキャストがいるのがパターンですが、この作品では歌手で成功を目指すカナがそれにあたります。
レコード会社と契約して歌手になったカナは、着ぐるみ歌手としてデビューすることになってしまい、自分のやりたい歌では勝負ができず、不満は膨らんでいきます。
また、友人たちもそれぞれの生活が始まり、全員が揃うことは滅多にありません。
高校時代にカナと一緒に音楽をやっていたタツオは大学受験に失敗して浪人に。
家族と信頼関係を築けないキリは、外に居場所を求め、上京してカナのマネージャーとして行動を共にする。
コウタとマリコはデキ婚で結婚、子供が生まれて、コウタは家族を守るため働いてた土木会社で社員になって真面目に働くように。
ユウキは大学に合格して上京。
リョウは、何か大きいことをやりたいと口ばかりで、実際に何をすればいいのかわからずに、怪しい誘いにのってしまう。
タツオは大学に受かったら上京するつもりでしでしたが受験に失敗します。
タツオは、カナの才能やすべてに惹かれていますが、タツオ自身は何者でもなく、カナとの差は広がるばかり。目の前にある浪人生活すら挫折しそうな現実に苦しみ、引きこもりのような生活を送るようになります。
キリは写真を撮っていたけれど、東京に出たのは家に居ずらいからで、具体的な目標があったわけではない。
みんなうまくいかずに葛藤していますが、普通にそんなものだと思います。
唯一、10代でデキ婚したコウタとマリコが波風を立てずに暮らしていますが、この作品では家庭は安心で、求めるものが大きいと深傷を負う、ということを描きたかったのでしょうか。
教訓めいたものを感じて、不思議な気持ちになりました。
あと恋愛があまりないのが新鮮に感じました。
嫌いな部分・カナの八つ当たりに食傷気味
カナ本人の意思とは別に、着ぐるみキャラを着た一発モノ的な歌手として売り出し、そそこそこ売れるものの、自分が築きたい世界とはまるで違うものになってしまいます。
悶々としてイライラがつのるようになったカナは、元相棒のタツオにもつらく当たってしまいます。
そのことがタツオの死に関係しているのかもしれない。
でも、カナは自分のことで頭がいっぱいで、正直そこまでタツオの気持ちを振り返ってはいない。
それにDV男と別れて戻ってきたキリのことを、お前が不幸の元凶だと言って追い出してしまったりとやりたい放題です。
キリは家族が自分に冷たく居場所がないと感じていたので、誰かと一緒にいたかった。だからカナにも本当に売れて欲しいと願っていたのは間違いはなかった。
でもキリは自分の人生を生きていなくて、カナに依存しているところがあったかもしれない。
確かにキリやタツオと比べると、カナの葛藤は自由な表現で売れたいのにそれがままならないというシンプルなもの。
キリやタツオとは違う種類の人間だということは表現されていたと思います。
受難の映画だった
最近、活動を再開させたとニュースで見かけた俳優の高畑裕太ですが、この作品の制作中に例の女性問題の騒動を起こしてしまい、撮影が中断されてしまったそうです。
結局コウタ役は、キャストを替えて撮り直ししています。
この事件でお蔵入りになりそうなこともあったけれど、なんとか上映に漕ぎ着けることができたといいます。
https://eiga.com/news/20180515/3/
ネタバレ・横浜流星がとてもいい
リョウ役を演じる横浜流星は、悪に手を染めたり、ちょっと危ない役です。
だけど友人たちには素っ気ないようで実はやさしく、特に挫折したカナに対しては、自分にない力を持っているとわかっているためか、ピンチには駆けつける友情の持ち主。
横浜流星は瞳に輝きがあって、いい俳優ですね。
暗い青春がよく似合います。
コロナ治療で退院後すぐに仕事に復帰しているようですが、あまり無理をせず、よい作品に取り込んでほしいものです。
ネタバレ・脇役が名優揃い
7人を支える脇の大人たちが魅力的でした。
タツオの父を演じているのは平田満。
息子を心配する常識人な父親であり医師を演じていました。
また、キリの母親を演じているのが工藤夕貴ですが、キリ役の清水くるみとは本当の親子に見えるほどいい感じに似せています。
キリの母親はキリに対して冷たく、キリは愛情を感じることができずにいた。
でも、タツオの父から、キリが子供の頃に受けた手術のお金をいまだに母親が払い続けていることを知られる。
キリは母の隠された愛情を知ることになる。
言葉で冷たく素っ気なくても、本当の気持ちは違うこともある。
だけど、言葉でも通じるようにした方が、誤解がないんじゃないと思いますけどね。
同性の親子だとありそうですけどね。
さいごに
あまり明るくないしキラキラもしていない。
暗くどんよりしているけれど、その分ドラマ性は高くて見応えがある映画でした。
この映画の舞台は、群馬県前橋市なのですが、そんなに何もないの?
以前行ったのですが、そうだったかな。
「なんもな〜い」「夜は真っ暗」
と地元民らがディスってました。
それではまた。
のじれいかでした。